依頼人の精神状態は不安定で罪状認否は不首尾に終わった。裁判となるがこちらに不利な状況は変らず
過去の法例を調査しながら打つ手を思案する。むしろ司法取引で減刑を狙うか。陪審にどうアプローチを
するか。助手に「時間です」と声をかけられ資料を抱えて法廷に急ぐ。裁判所のエレベーターで検察官達と
一緒になった。彼らは無駄口を叩かない。満員のエレベーター内は妙な静寂と緊張があった。刑事部の
フロアで彼らは降りる。一人がちらりとこちらを見た。私も目で応える。誕生日おめでとう、後で会おう、と。

…もごもご弁護士さんと検察官さん。お仕事中でした。

今日の法廷は予備審議のみ。依頼人の接見はキャンセルになった。５階小法廷前のロビーには日が差して
明るい窓際で携帯をかける。相手はすぐ出た。「今夜は早く帰れるんだ…じゃ私の家で…いいね、楽しみだよ」
電話を切って目を上げると通りかかった老婦人と目が合った。「恋人？うらやましいわね」と彼女が微笑んだ。
私も微笑み返し、老婦人の背を見送ってから窓の外を眺めた。隣の検察庁ビルの3階、東から４つ目の窓、
彼のデスクは奥まっていてここからは見えないが。さて、食料品屋でスコッチに合うつまみを見つけてこよう。

…弁護士さんは今日は早上がりらしいです。検察官の彼も定時で帰れるらしい。ふふふ

「煙草のめのめ空まで煙せ、どうせこの世が癪の種…ってな」吹きさらしの非常階段で、裁判所に出入りする ( Read more... )

以前この別荘に来たのは３ヶ月前。最初に始める儀式は掃除で、土曜の午前中を費やす。私が水周りを ( Read more... )

妻名義の別荘は街から１時間の郊外にある。離婚の際の財産分与で彼女がこの家を残したのは不便さが
理由だが誰も来ないから私と彼が週末を過ごすには丁度いい。照明と暖房をつけ埃除けのシーツをはずす。
ピックアップが止まり私は外へ飛び出した。運転席のドアを開ける彼をそのまま座席に押し倒すようにして
口づけると旧友は私の首に腕を回し応えた。息を継ぐために唇を離すと「昔のままだ、あんたは」とはにかみ
彼は笑う。君だってそうだ。トラックの荷台から食品と酒を下して、私達の待ちに待った週末は始まった。

…もごもご弁護士と検察官、やっと二人っきりの時間が始まりました。妻と離婚とか言ってるのは検察官。
それってキャリアに影響しますよね…まあ、それをカバーする腕があるってことで…ホントに、この人達の

陪審員はひどく妥当な判断を下して検察、弁護士そして被告も納得の判決となった。被告人と言葉を交わし ( Read more... )

同じ裁判を担当するのは７度目。弁護士としての彼は警察が見つけられない物証を出してくるのでやっかいだ。
裁判所の非常口で私達は煙草を吸う。刑事事件の検察官と弁護士が並んで喫煙するのは全館禁煙のせいで
当然、事件の話題はない。公判中は会わないのがルールだ。「裁判が終わるまでお預けだな」と呟くと「何が」
と彼がわざと聞く。「何がって」自分が赤面するのが分かる。「自分でするな、溜めとけよ」平然と面白がる彼を
睨み「ポーカーフェイスも厭味だぞ」と言うと「だって弁護士だもの」と笑いながらドアを開け廊下を戻って行った。

…ひさびさに熱血もごもご弁護士とクールビューティ検察官。検察官側の視点で書くのは初めてですね。
弁護士は意外と出来る奴ｗ

夜遅くなってから人目を避ける様に検察官は私の事務所にやってきた。「明りが点いていたから」という彼は
とても疲れていた。彼の担当事件が結審したのだ。重大事件だが被告人には同情すべき事情が多々あった。
普段は依頼人が座るソファに崩れるように座ってネクタイを緩めながら彼は呟いた。「君が弁護してくれてたら
あるいは違った判決になっただろうな」そして目を閉じ深いため息をついた。「…無罪にしてやりたかった」
優しい気持ちと決別し法を遵守する彼にウィスキーのグラスをそっと手渡す。今夜は私の家に一緒に帰ろう。

…同棲してるわけじゃないんですよ。クールビューティ検察官ともごもご弁護士の続きでした。

彼の指が明確な意思を持って動き始めた時になって私は思い出した。「くそ、来客の予定がある」
「早く言え…もう遅いよ」私達はすでにビジネスデスクの上で肌同士を密着させてしまっている。
彼は性急に動き出した。いつもより激しい刺激が私の内部を駆け巡る。声を事務所の外に漏らさぬよう
唇を噛み締めた時、外に車が止まったが彼は止めなかった。早くなる動悸。階段を上がってくる足音。
来客のノックには答えられなかった。デスクに突っ伏して荒い呼吸のまま私達は動けなかったので。

…鍵がかかっててよかったね。検察官と弁護士つづきでした。

扉が閉まるエレベータに飛び込むと私は検察官にくってかかった。「あの証人を出すのは卑怯だぞ！」
検察官は軽く肩をすくめて「だが判決は出た。３勝３敗イーブンだな」と薄く笑った。その上こうも言った。
「弁護士はもっとはっきり喋った方がいいぞ、陪審員が時々首を傾げてた」悔しがる私を面白がっている。
エレベータが到着階をチャイムで知らせる寸前「あとで行く」と検察官は私の耳元にすばやく口づけして
乗り込む人と入れ替わり降り、私は彼の生き方そのままの真っ直ぐな背筋をドアが閉まるまで見ていた。

…クールビューティ検察官と熱血もごもご弁護士はきっと司法学校の同窓生かなんかです。