Salvation Ch. 5 >1

Sep 12, 2006 08:18



『Salvation ――救済―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Salvation.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Isis様 (isiscolo)
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Pairing: Snape x Draco (その内リバあり)
Previous: これまでのお話
Summary: あらすじ

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このスラッシュの翻訳は、原作者のIsis様 (isiscolo) のご許可をいただいて掲載しております。
原作はこちら: http://hieroglyfics.net/hp/salvation.htm

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盗聴呪文の一件以来、父の手紙は、明らかに今までとは違う調子を帯びだした。権力に対する遠回しな約束は消え、有無を言わせぬ要請が冷ややかに列挙されるようになったのである。『学業に於いて優秀な成績を修められたし。権門の子息と友好を結ばれたし。望むと望まざるとマルフォイ家の者に相応しい振る舞いをされたし』セブルスへ直接の言及がないという事実は、父の性格を鑑みると悪い兆候なのだろう。

ドラコは届いたばかりの家書を開け、ざっと目を通す。いつもの文言、そして、それに加えて……。

「何か書いてあるの?」ミリセントが聞く。

「復活祭には家に戻ってこい、だってさ」ドラコは眉を顰めながら言った。

「だって、降誕祭休暇には帰らなかったんでしょう?きっと寂しい思いをされてるわ」

ドラコは棘のある笑い声を上げる。「君は僕の両親を良く知らないとみえるね。母は、僕が産道を通り抜けたときに、母親としての義務は終わったと思っているような女だし、父は、僕を軟弱な勘違い野郎だと思ってる。親の言いつけを守らない、最低な息子だってね」

ミリセントが鼻を鳴らす。「軟弱?あなたが?」

「父に比べてね。当然、トロールも軟弱な部類だな、父と比べたら」ドラコは再び手紙に視線を落とす。「『貴殿が成人されるに当たり、討議致したい事が有る』、だってさ」

「えー?!まさかあなた、どうやって赤ちゃんができるか知らないの?!」

ドラコは手紙で彼女をぶつ真似をして、ミリセントがころころ笑う。彼女の笑顔は中々可愛らしかった。美人とはいえないけれど、楽しそうなときの彼女は内から輝いているようである。ミリセントは子供のころから一度たりとも、感情を表すことが忌むべき弱みだなどと言われたことはないのだろう。

ドラコは自身を振りかえる。恋人といるとき、マルフォイの仮面を外しその開放感に浸れるようになったのは、極最近のことである。また、恋人の厳めしく険しい顔が、稀に笑顔になるのを見るのは、新たに覚えた楽しみだった。

復活祭に実家へ帰ったら、一週間も彼に会えなくなる。そして待っているのは、厳格な父親の下、監視される毎日。愛情を――まるで金貨か何かのように――出し惜しみする両親との一週間。……金貨か。

「……資産管理の話だと思う。マルフォイ家の」

ミリセントが真剣な顔をして頷く。「それなら、なおさら帰らなくちゃ」

「夏休みになってからでいいよ」

「本当にいいの?」ミリセントは静かに続ける。「ここのところ何が起こってるのか、分かってるの?戦争になるのよ。つぎの夏休みは、来ないかもしれないわ」

「分かってるさ、勿論」ドラコは言いかえす。「みんな僕に、どちらに付くのかって迫るんだ」

「戦争になって、ご両親と違う道を選ぶことになったら、どうするの?」

ドラコは彼女の言葉の重みを噛み締める。これは仮定上の質問ではなかった。身も心も闇の帝王に捧げている父は、生きてその配下を逃れることはできないだろう。

いかに、『まだどちらに与(くみ)するとも決めたわけじゃない。いよいよ決定を下さざるを得なくなるまでは、セブルスに従っているだけだ』と自分に言い聞かせようとしても、実のところ、すでに決断が下されていることは分かっている。それは恋人の睦言とともに耳から注ぎこまれ、抱擁とともに骨まで染みいっていた。かつてセブルスに、心配してください、と言ったとき、教授はドラコに、自分を大切にするだけでなく、自分の理想をも大事にすべきだと説いたのである。戦争になったら、父とともに歩むことができないのは分かっていた。しかし、そのときが来るまでドラコは、父に背を向けることができなかったのである。

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