Salvation Ch. 2 >2

Apr 30, 2006 21:30



『Salvation ――救済―― 』 の翻訳を更新しました。今回の部分は結構気に入ってます (*^_^*) 。Here is the new part, which I'm pretty fond of, of the Salvation translation :).
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Isis様 (isiscolo)
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Pairing: Snape x Draco (その内リバあり)
Previous: これまでのお話
Summary: あらすじ

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このスラッシュの翻訳は、原作者のIsis様 (isiscolo) のご許可をいただいて掲載しております。
原作はこちら: http://hieroglyfics.net/hp/salvation.htm

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最悪なのは、他人の身体を目の当たりにするのは、人狼に追いつめられるよりも怖かったことである。クィディッチの更衣室でドラコは、仲間の裸に一秒たりとも必要以上、視線を留める勇気がなかった。そんな性癖は嘲りの対象であるはずだった。他の人間に――弱い人間、馬鹿な人間に――該当すべきことだった。ドラコはまた、誰かの気を惹くなど、自分にはとてもできないとも思った。この性癖が自分だけのものかもしれないと考えると……。

彼は自分の欲望を胸の奥に収め、表面上はマルフォイの仮面を保っていた――人気者のマルフォイ、斜に構えたグループのリーダー、マルフォイ……。しかし彼は夜ごと床のなかで、スリザリンのビーターであるデリックの、そのつぎは、ブレーズの夢想をした。その後一時期は、廊下で見かけた名も知らぬレイブンクローの少年、そして一瞬あのハリー・ポッター野郎の空想に耽ったことさえあった。その後季節は夏になり、フランス旅行があり、父親の監視下で彼は軽率な真似はできなかった。そしてまた秋が巡り、突然頭から、薬学教授のことが離れなくなっていたのである。

その薬学教授はまさに今、広間を横切り、食卓に近づいてきていた。寮監の姿を認め、スリザリン生のおしゃべりは静まる。

「降誕祭休暇の件だが、学校に残る者は?」スネイプが聞く。

「私、残ります」レイブンクローの長食卓を見やりながらトレイシーが言った。

「私も」ミリセントが次いで言う。

スネイプは食卓を見渡し、ドラコに目を留めた。「マルフォイ君は?」

ドラコは首筋が赤くなるのを感じる。「まだ、決めてません」先週の家書からは、帰省すべしという両親の意向が明らかに見てとれた。特に、お前の誕生日が休暇中にあるのだから、と父は念を押していた――記念すべき誕生日、家族とともに過ごすべき、極めて重要な誕生日が。

「では、一覧は大広間の扉付近に掲示しておくから、残るのならば名前を記入するように」 スネイプは再びドラコに視線を滑らせてから、黒いマントを棚引かせ、教職員用食卓に戻った。

「どう?」ミネルバ・マクゴナガルが聞く。

「分からん。だが彼が残らないのならば、絶望的だろうな」

「でも相当進歩したじゃない、セブルス。ここ数ヶ月で彼は随分変わったわ」

それは事実である。スネイプは数週間に一度、マルフォイと話をするよう、心がけてきた。学業について、監督生としての責務について、クィディッチについて……。 少年を追いつめないよう慎重に、だが同時に適度な精神的圧力を与えつつ。「彼は、成長しているよ」

「そろそろ、そうあって欲しいものだわ」マクゴナガルは厳しい調子で言った。「ホグワーツ史上一の小生意気な餓鬼でしたものね」

「我々の未来は、小生意気な餓鬼の手中にあるのさ、ミネルバ」

マクゴナガルは溜め息をつく。「そもそも未来があるとすればの話ですけどね。ロンドンから不穏な話が漏れ伝わってくるわ。魔法省は転覆されているも同然だって言うじゃない?」

スネイプは唇を固く結んだ。「予期していなかったことではないさ。記事にはならないが」

「そう、記者たちは口を噤(つぐ)んでいるわね。でも私の従兄弟は怖がって、ロンドンを離れるって言ってるわ」

そのとき、いっせいに郵便梟が大広間へ飛んできて、頭上を煩く旋回しはじめた。一羽がスネイプのまえに封筒を落としていった。淡黄色の分厚い羊皮紙、そして、それを綴じる封印はマルフォイ家の竜の紋章。スネイプは封を切り、手紙を広げる。

『我が親愛なるセブルス

貴殿が法外な時間を愚息と過ごしている由、側聞した。貴殿の指導は薬学術に限られるべき旨、今一度指摘致したい。修身教育は保護者の責務である。貴殿の素行に疑問の余地有りと信ずるに足る根拠を有する故、当然乍小生は憂慮するものである。

愚息に指一本触れてみ給え。ダンブルドアですら貴殿を守り得ぬ事、覚悟召されよ。

ルシウス』

スネイプは、マルフォイ少年を恋人にするつもりはさらさらなかった。その考えが魅惑的でないと言い切る自信はなかったが。

ドラコはかつてのルシウス同様、しなやかな体躯に美しい容貌を持ち、抜けるような白金髪をしていた。何気ない仕草に高慢さを滲ませるその立ち振る舞いは、紛れもなくルシウスの面影を宿している。その身の熟しはさながら若い王子のようであった。スネイプはまた、彼自身がかつて抱いていた同様の渇望を、ドラコから感じとった。障害をものともしない成功への野望、権力に対する憧憬を。当時、スネイプより三学年うえのルシウスは抗いがたいオーラを放っていた。ヴォルデモートが支配する闇の世界との親密さは、ルシウスの魅力を際立たせる一つの要因に過ぎず、ルシウスはその魅力を容赦なく利用し、若きスネイプを自分の世界へと誘いこんだのである。かつてのスネイプ同様ドラコもまた、権力に縁取られた輝ける世界への先達を求めているようだった。

スネイプは、ドラコが父親ではなく、自分を選んでくれること、そして自分がかつてのルシウスより良き指導者となれることを、唯々願った。

スリザリンの長食卓では、ドラコが自分の手紙を開けていた。母親からのとおり一遍の書札と、同封されているのは彼が贔屓にしている銘柄のチョコレート、そして父親からの短い手紙だった。

『休暇中、学校に留まる等の戯言は聞きたくない。我々は使命を有し、貴殿にも重任が有る。至当な行動を取る積りが有るならば、帰省されたし。

近頃過当にスネイプ教授と交遊している由、漏聞した。同君が親友共に背を向けたという事実は、貴殿もご承知の通り。然し乍、同君が信用に足らぬ根拠は他にも有る――遥かに重要な根拠が。

同君が貴殿に近付かんとする事は驚きに値しない。貴殿の友人に成りたい由、言い越すと推量するが、其れだけでは済まないだろう。学生時代、同君は――貴殿が女性を好む様に――男性を好んでいた。以後変わったとは思えない。貴殿に指一本触れさせる事の無き様』

ドラコは手紙を仕舞いながら震えていた。やった……と思う。……やば。

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A/N:

今回の部分は原作を読んだ時から気に入っていたので、訳していてとても楽しかったです。 (*^_^*)
特に、スネイプがドラコに、そして嘗てのルシウスに思いを馳せている箇所なぞ、耽美的で綺麗ですよね。

Lala

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