Habitué Part 05

Jun 30, 2007 20:15


『Habitué ――常客―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Habitué.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Anise様 (anise_anise)
Pairing: Snape x Draco
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Previous & Summary: これまでのお話 & あらすじ
Original Work: 原作 ※この翻訳は原作者様のご許可を頂いて掲載しております

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次週は、同様に過ぎていった。スネイプは知己(ちき)に梟便を送っては、得た情報をドラコに転送し、その間三度ウィルトシャーに足を伸ばして、マルフォイ邸から闇魔術用品を除去するための指揮を執る。ドラコはこれら全てに正当な対価を支払い、邪悪な品々が可能な限り破壊されるよう心を砕いた。物品から利益を上げないよう腐心している様子を見て、スネイプはドラコを見なおす。息子は、父親とは違う価値観を有する人間に成長したらしかった。

こうしてドラコは、定期的にスネイプを訪ねるようになる。研究室で黙々と作業を熟(こな)したのち、スネイプの居室に引きあげ、ブランデーの杯を傾ける、というのが、二人の習慣となった。このような晩を重ね、いつしか会話は、マルフォイ邸の闇魔術用品廃棄から、様々な話題へと移っていく。ドラコは知的会話にも殊(こと)のほかよく付いてきた。機知に富んでいて、勘が良く、分からないことがあれば臆せず質問する。そんなドラコの訪問を、スネイプはいつしか心待ちにするようになっていた。またある時は、互いに沈黙を破る必要性を感じることなく、ただじっと暖炉の火を見つめることもあった。そのような折、スネイプは、輪郭を火に縁取られた少年の端整な横顔を、そっと盗みみるのであった。

スネイプはドラコの孤独に思いを馳(は)せる。ドラコがこれほど頻繁に訪れるのは、とても孤独だからに違いなかった。マルフォイの名前に傷が付いたとはいえ、ドラコの魅力に陰りは見えず、交際相手に不自由するとも思えない。美しい相貌も健在である。にも関わらず、ほかの若者が若者同士遊びにいくところ、なぜドラコは自分の許へと戻ってくるのであろうか――。

胸中でドラコを、美しいと評した事実の言外の意味について、スネイプは深く考えないことにした。

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「セブルス、おはよう」

スネイプは虚を突かれて顔を上げる。「ルーピン」

人狼は先期より、対闇魔術防衛術教師としてホグワーツに戻ってきていた。スネイプに言わせれば、ルーピンは未だに、鼻持ちならない優等生野郎で、何の取り柄もなく、この世で最も忌み嫌われるべき生命体の一つである。通常は食事時、奴と顔を突き合わせずに済むという幸せに浴していたのだが、今朝はその幸運にも見放されたらしかった。

ルーピンは満面の笑みで近づいてくると、隣の席に腰を下ろす。「良く眠れたかい」奴は無邪気に聞くと、粥(ポリッジ)を自分の碗に装(よそ)いはじめた。

スネイプはうさんくさげに横目で睨み、撥(は)ねつけるように言う。「何の用だ」

ルーピンはただ、笑みを広げた。「べつに、セブルス。ここでは、同僚同士、和やかな会話も楽しめないのかい」

「その同僚とやらはお前をわずらわしく思っているので、答えは否だ」スネイプは突き撥ねる。

出来損ないの狼は、愉快げに含み笑いを漏らした。「君って、本当にひねくれ者だね」

「そうか」スネイプは聞く。

「うん。べつに用なんてないよ」

「ではなぜ私に話かける」

「ちょっと興味深々なだけさ。ホグワーツに住んでるほかの皆と同じようにね」

「興味深々だと」いったい何の話だ。

「そう。様々な憶測が飛び交ってるんだ。若くて、美貌で、かつ、独身の卒業生が、夜ごと君の部屋を訪れるのは、なぜかって」

スネイプは呆気に取られる。ドラコの訪問が、他の住人の知るところとなっているなど、想像だにしなかった。ましてや、それが噂の的になるなど。「何だって」

「べつに非難してるわけじゃないんだよ。ドラコは、それは魅力的な青年に成長したものね」

「今、何と」

「照れなくてもいいよ、セブルス。肝斑(しみ)一つない白い肌、絹のように滑らかな銀髪、そして忘れちゃいけない、きゅっと上がったお尻。気づかないとしたら、盲目、気づいてて行動に移さないとしたら、生ける屍だね、君は」

スネイプが、阿呆のように口を開け放さなかったのは、ひとえに堅固なる意志の成せる業(わざ)だった。「保証するが、マルフォイ君と私の間には何ら不適切な関係は存しないと」スネイプは唇の端から言う。

ルーピンは納得できるかという顔をした。「またまた。あんな可愛い金髪の子が毎晩部屋に現れたら、僕なら皆に触れて回るね。僕たち、深い関係にあるって」

ふん、人狼野郎は隠し立てをしない主義というわけか。実際先月、スネイプは、奴とそのろくでもない恋人が教員室に二人きりでいるところに出くわす羽目になったばかりである。思い出すだにおぞましいことだが。

「お前がどう思おうと、あいにく私は倫理というものを持ち合わせているものでね。殊に我がスリザリン生に関することに掛けては。私は、生徒と寝る趣味はない。現在も、そして、過去においても」スネイプは冷笑を浮かべたが、息は必要以上に荒く、頬が熱い。狼の糞野郎め。

ルーピンは冷静に続ける。「あの子はもう生徒じゃないよ、セブルス」

スネイプは目を閉じ、鼻梁(びりょう)を押さえた。「お前とこの会話をしている自分が信じられん」つぶやき、横目で人狼を睨みつける。「ああ、彼は生徒ではない。そのとおり。しかしながら、指南を求めて訪ねくる子供であることには変わりない。とりわけ、保護者を失ったばかりの今」当該保護者の喪失は、むしろ、ドラコがためであろうことは、この際指摘すまい。「私は寮監としての責務を極めて重く受け止めているのでね。巣立っていったスリザリン生の相談役を買って出るのは、何も今に始まったことではない」スネイプは言葉を切って朝食に向きなおり、口を開きかけたルーピンを無視した。願わくは、このまま一生奴を無視しつづけられることを祈りながら。

「保護者ねえ。君って父親崇拝者にもてるんだ。知らなかったよ」耳元でささやいてから、狼野郎は立ちあがり、輝かんばかりの笑顔をまといながら去っていった。

スネイプはおもむろに匙(さじ)を下ろすと、椅子に凭れかかり、ルーピンが能天気に大広間を出ていく様を目で追う。「ふざけるな」スネイプは喉の奥で悪態をついた。

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