Habitué Part 06

Jul 06, 2007 23:43


『Habitué ――常客―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Habitué.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Anise様 (anise_anise)
Pairing: Snape x Draco
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Previous & Summary: これまでのお話 & あらすじ
Original Work: 原作 ※この翻訳は原作者様のご許可を頂いて掲載しております

===

次回、少年が顔を見せた時も、スネイプは魔法薬を調合している最中だった。今回はマダム・ポンフリーのためである。ドラコは、到着するや、まっすぐ作業台に向かうと、慣れた手つきで準備を始めた。二人で黙々と働いた結果、作業は予定より遥かに早く終了する。片づけと掃除が終わると、ドラコはスネイプに向きなおった。

「次は何を」

スネイプは使っていた手拭いを脇へ押しやる。「今晩はここまでだ」

ドラコは微笑んで頷いた。スネイプは、横目で用心深くドラコを観察する。これからこいつに、ルーピンの指摘により知るところとなった不愉快な事実について、話さなくてはならないのである。

「もしお時間がありましたら。あの、もしよかったら、僕――」ドラコが口を開く。

「ドラコ」スネイプは苦々しい思いでこれを遮った。「話さねばならぬことがある」

「了解です。では、お部屋に行きましょうか」

「論外だ」スネイプは思わず声を荒げ、ドラコの傷ついたような顔にたじろいだ。

「それほど招かれざる客だったとは思いませんでした」少年は表情を硬くする。「お話されたいこととは何でしょうか」

スネイプはため息をつき、作業机に寄りかかった。「ドラコ、君が私を訪ねてくることについて、ホグワーツ城の住人たちが何と言っているか、考えたことはあるかね」ドラコは疑問符を浮かべたような顔をしている。ふん、何も知らないらしい。上出来だ。私がこの餓鬼の蒙を啓(ひら)く役回りというわけか。それは知らないだろう。知っていれば、今ごろ奇声を上げながら辺りを走りまわっているだろうから。

「噂が、ある」スネイプは慎重に始めた。「我々の関係の性質について」言葉を切り、ドラコの反応を窺う。

「どのような噂でしょうか」ドラコは首をやや傾(かし)げ、視線を上げた。

「我々が」スネイプは言い淀む。「深い、関係にあるという――噂だ」再び言葉を切り、来(きた)るべき爆発を待つ。そして待ちつづける。

「ああ、そうですか」奴は気取った手付きで白金色の後れ毛を掻きやった。「それだけですか」

開いた口が塞がらないとはこのことか。「私の言った意味が分からないのかね」厳しい調子で尋ねる。

ドラコは澄ました顔で微笑んだ。「もちろん分かってます。皆、僕らが、やってるって思っているということでしょう。そんなことについてお話しなくてはならないのですか」

机に寄りかかっていたのは、不幸中の幸いだった。さもなくば、薔薇色の唇からこぼれる『やる』という言葉は、確実にスネイプの足をすくっていたであろうから。「そんなことについて、だと」自分の声が弱々しいことに気づき、慌てて語気を荒げる。「気でも違っているのか」

ドラコは意に介す様子も見せず、静かな視線を返した。

「先生。僕たち、そろそろ自分の噂を聞くことに慣れてもいいころです」瞳に茶目気を宿し、続ける。「それに、そんなに悪い噂でもないじゃないですか。むしろ、おもしろいというか」

まともな思考能力を有していたならば、スネイプは、動揺を隠し果(おお)せぬ自分に恥じ入っていたに違いない。「おもしろ、君は、その、何だって」口が回っていない。「何を考えているのか知らぬが、これは、おもしろがるようなことではない」

ドラコは悪戯坊主のように微笑む。「おもしろがってるなんて、誰が言ったんです」

そして奴は、何と、片目を瞑ってみせた。

冗談ではない。今すぐ示しを付けなくては。スネイプは背筋を伸ばし、ドラコの前に立ちはだかるようにして見おろす。「まさか君は、自分の名前が私の名前とともに他人の口端に上ることを望んでいるわけではあるまい。世間体というものを考えたまえ。この、思いあがった愚か者めが」

ドラコは優雅に手を翻して、いともたやすく侮辱を払いのけた。「先生。父のお蔭で、僕の名前はもう充分、地に落ちています。これ以上悪くなることはありませんよ」奴は歩を踏みだし、近づいてくる。「それに、周りがどう思うかではなく、僕が、誰と寝たいと思っているかってことが問題なのではないですか」

奴は今、『寝る』と言ったのか。目眩を感じて口ごもる。「私は」

陶器のような手が、水の中を移動するかのごとくゆっくりと擡(もた)げられ、スネイプのローブの前を撫でた。「何かご異論でも」完璧なまでに美しく眉を上げて、少年が尋ねる。

あの眉の上げ方は、私から学んだものだ。

スネイプは思わず身を引く。「当然だ」意図したより強い調子で言ってしまい、即座に後悔した。

ドラコは表情を止め、背を向ける。「僕に魅力を感じてはくださらないのですね。大変失礼いたしました」

スネイプは反射的にドラコのローブの後ろ身頃をつかみ、出ていこうとするのを制した。「ドラコ」少年はかえったが、目を合わせようとしない。「なぜこのような会話に至ったのか皆目(かいもく)検討が付かないが、これだけは保証しよう。当該議論において、君の魅力、および、それに対する私の感情はいっさい関係ないと」ドラコの瞳に期待が過(よぎ)る。「君は元生徒であり、私にとっては今でも生徒同然だ。指導下の、もしくは、極最近まで指導下にあった若い人物と関係を持つことは、極めて無責任な振る舞いだと、私は考える」ドラコは視線を伏せる。スネイプは再度嘆息し、不承々々言い添えた。「いかに、心そそられようとも」

「本当ですか」

「ああ、本当だ、ドラコ」スネイプは声を和らげた。そして、ドラコの肩に手を置こうと腕を伸ばしかけ、はっと手を止める。何という誤解を生みかねない振る舞いだ。しかし、そもそも、なぜドラコに触れんと欲する衝動などに駆られたのか。スネイプは慌ただしく身を引き、少年との間に距離を置く。「以上を総括すると」スネイプはいつもの平坦な声に戻って続けた。「今後は、日中の執務時間中に来てもらったほうが賢明だと考えるのだが。体裁上」

「分かりました」ドラコはぎこちなく答える。「全くお伺いしないほうが良いということはないのですか」

「過剰反応するのはやめたまえ。自室ではなく、研究室に来てもらったほうが適切だと言っているまでだ。ところで、何か話があったのではなかったのかね」

「べつに大したことではないです。それに、お気づきでないかもしれませんけど、外はもう暗くなってます。僕、うっかり不適切なことをしたくありませんから」言い捨てると、ドラコは踵を返し、部屋を出ていった。後には必要以上に動揺し、スネイプが独り残される。

スネイプは首の付け根に手をやり、静かに悪態をついた。いつから、あいつの機嫌が、自分の気分を左右するようになったのだ。スネイプは首を振ると、大股で部屋を後にし、居室に向かった。強い酒を呷(あお)り、夢も見ずに深い眠りに就くと、固く心に誓って。

[ << ] [ Main ] [ >> ]

===



translation, habitué, slash, hp

Previous post Next post
Up