Salvation Ch. 6 >5

Dec 04, 2006 23:03



『Salvation ――救済―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Salvation.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Isis様 (isiscolo)
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Pairing: Snape x Draco (途中リバあり)
Previous: これまでのお話
Summary: あらすじ

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このスラッシュの翻訳は、原作者のIsis様 (isiscolo) のご許可をいただいて掲載しております。
原作はこちら: http://hieroglyfics.net/hp/salvation.htm

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石柱の円陣は、月明かりに照らされ、悪意を持っているかのように浮かびあがっていた。蠢(うごめ)く蔓が、一人の少年を中央の石に縛りつけており、その頭はだらりと肩に凭れかかっている。僕の頭が父の肩に凭れかかっているのと同じだ、とドラコはぼんやりした頭で考える。少年は随分幼くみえた。八つか九つほどだろうか。裸の身体もまだ充分には発育していない。暗い祭壇に、一抹の清らかな飛沫が飛んだかのような無垢な姿だった。

「前回同様、一緒に行うのだ」父が囁く。ドラコは父の声を、聞くというよりは、感じた。インペリアスに掛かっているとき、いつも頭に広がる霧のなかに、父の言葉は染みこんでいく。「反時計回りに歩いて、第六角を描くように、三番目の石まで行きなさい。合図をしたら、トランスフェレ・ヴィクタスを始めるのだ」

ドラコは蹌踉(そうろう)と三番目の石に歩み寄った。父と自分を繋ぐ呪文の糸が、左右に揺れ伸縮するのを感じ、蜘蛛の巣の糸のようだと思う。自分は蝿で、蜘蛛が動くたびに、絹のような糸を伝わってくる振動とともに頼りなく揺れるのである。

と、突然、蜘蛛の巣の細い糸のあいだを、爽やかなそよ風のようなものが吹き抜け、揺れが変わった。ドラコは朦朧としながらも、それが蜘蛛の方から吹いてくる風ではないことに気づく。そよ風は胸を――否、心臓を――目掛けて吹きつけ、蜘蛛の巣に絡まれたドラコを揺らす。風は続いてドラコの頭のなかを駆け抜け、それはインペリアスの霧を吹き晴らすようだった。初めて目にするような気持ちで、円陣の中央に意識なく横たわっている少年を眺める。

「父上、あれは誰ですか?」

父が息を呑みこむのが聞こえる。

「マグルだ。取るに足らない餓鬼だ。動物のようなものだ。気にすることはない」『気にするな』というのは命令だった。

昨日の狼を思いだす。あれは動物だった。この少年は動物ではない。

「でも、男の子です」

「マグルだ、ドラコ。昨日は動物、今日はマグル、そして明日は、魔法使いの名を辱める穢れた血。一段階ごとに、我々は強くなる。そしてお前が、あの裏切り者を円陣の中央に引き摺りだすことができれば、その力をも取りこめるのだ」

「殺させるおつもりなのですね、男の子を」言葉を口から押しだすのは、非常な努力が要った。口を開いているあいだにも、声を出す気が失せそうになる衝動と戦いつづける。

「反時計回りに三番目の石へ行くのだ。今すぐ!」

頭のなかに再び濃く霧が立ちこめ、蜘蛛の糸が身体を束縛する。なぜ今し方、三番目の石まで歩んではいけないと思ったのか、必死で思いだそうとする。しかし、それは最早どうでも良いことであった。蜘蛛が糸を引き、ドラコはただ操られるがままに揺れた。

自分の杖が無意識に上がり、少年に向けられる。「トランスフェレ・サングィニス」赤い光が石の隙間を縫って火を吹き、自分と父のあいだを抜け、血紅色の三角を形作った。「トランスフェレ・ススピリタス」青い光が加わり、二色の光は蛇のように絡まりあいながら、痙攣する少年の身体の表面を這いまわる。

「トランスフェレ・ヴィクタス」自分がそう言うのを聞き、少年の胸が身悶えしながら跳ねあがり、ドラコは身体に力が――狼のとき同様に、しかしもっと強く、甘く、暗く――漲るのを感じた。白い光が自分の鼠径部から指先まで包みこむのを感じる。今なら蜘蛛の巣を振り払い、逃げることができる。しかし、すでにそんな気は失せていた。逃げて何になろう。蜘蛛も、自分が包まれている同じ白い光のなかに輝いている。逃げだそうと思わなかったのは、最早自分が蝿でないと分かっていたからだ。ドラコは、新たなもう一匹の蜘蛛となったのである。巣は今や自分のものであった。

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