Salvation Ch. 6 >3

Nov 22, 2006 00:45



『Salvation ――救済―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Salvation.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Isis様 (isiscolo)
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Pairing: Snape x Draco (途中リバあり)
Previous: これまでのお話
Summary: あらすじ

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このスラッシュの翻訳は、原作者のIsis様 (isiscolo) のご許可をいただいて掲載しております。
原作はこちら: http://hieroglyfics.net/hp/salvation.htm

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割れるような頭痛は、史上最悪の二日酔いにも匹敵した。窓辺から差しこむ日の光を避けようと、ドラコは寝返りを打ち、頭だけでなく体全体に痛みが広がっていることに気づく。二日酔いのうえ、ヒッポグリフに薙ぎ倒されたらこのような具合だろうか。寝台から出るなどという考えは、ほんの少しも起こらない。

昨晩は、ひどい一日の締め括りに相応しい、ひどい夜だった。あのあとドラコは、父に具して書斎へ行き、頭巾の付いた黒いローブを着せられたのである。荷扱室から二人でアパレートすると、到着したのは森の麓で、大きな石が、寝ずの番をするかのように円を成して屹立していた。

獣の唸り声が聞こえ、インペリアスにぼやけた瞳を凝らすと、中央の祭壇のような石に、狼が縛りつけられていることに気づく。「あいつを黙らせろ」父が小声で命じ、ドラコは従順に杖を上げた。

父が再び何か耳元で囁く。四肢に甘ったるい感覚が広がり、ドラコは夢遊病者のように、石の円陣のなかへ踏みだした。杖を持った手が無意識に動く。頭のなかに響く指令をぼんやりと聞きながら、ドラコは、杖から冷たい炎が発せられ、弧を描いて、石に横たわっている獣を包むのを眺めた。

狼の断末魔は活力となってドラコのなかに流れいり、自分と父の身体を包みこんで、ドラコの朦朧とした意識に火花を散らしていった。苦痛と快楽が入り混じる。最後の閃光が光ったあと、父が再び囁きかけ、二人は森からディスアパレートした。そして邸宅に着き、父に抱き抱(かか)えられるように階段を上り、寝台に倒れこんだのである。

そろそろと寝台で身を起こすや否や、吐き気に襲われ、ドラコは洗面所に駆けこんだ。見あげると、鏡のなかの顔は、やつれて青白い。憑かれたような目のしたには、暗い隈ができていた。瞳のなかに、今までなかった光がある、と思う。それとも、今まであった何かが失われたのか。

窓外から伸びる木立の影から察するに、もう正午を過ぎているだろう。昨日の服を着たままだった――黒いローブと杖はなくなっている。手を付けなかったローストは、麺麭(パン)と乾酪に替わっていた。扉は再び施錠されている。

父が入ってきたのは、黄昏時のことだった。「食べなさい。今晩も忙しいのだから」

ドラコは、座っていた筆記机のまえから、虚ろに父親を見あげる。本当は父に駆け寄り、両の拳で殴りかかりたかった。しかし、喉元まで出かかっている罵りの言葉を発する力すら、掻き集めることができない。気づくとドラコは、寝台脇の小卓に歩み寄り、乾酪を口に押しこんでいた。水差の水は生温(ぬる)かったが、これも構わず飲み干す。

「そう、それでいい。黒魔術には力が必要だからな。奴らに誰が支配者か思い知らせてやるのだ。操られるまえに操るのだ。私はいつでも手を貸してやろう」

「『手を貸して』……」ドラコはゆっくりと繰りかえす。「強いる、かと思ってました」

「お前は死んでいたかもしれないのだぞ、狼を殺した時の反動力で。じきに、お前も独りで力を制御することができるようになるだろう」

「独りだったらあんなこと、やってません」

「今にやるようになるとも」父は口角を上げた。露になった父の歯を見て、ドラコは、昨晩の狼を思いだす。「黒魔術を使うたびに、少しずつ、魂を闇の世界へ――こちらの世界へ――捧げていくのだ」父が手を差し伸べ、ドラコの顎の線をなぞる。「全ては、お前を愛しているからなのだよ。二人ならば、想像を絶するほどの力を手に入れることができる」

顔に触れた父の手から、力が流れこんでくる。それに加えて、父の指先から感じるのは……愛情、だろうか?ドラコは虚を衝かれ、思わず父の腕に飛びこみたい衝動に駆られた。子供のように強く抱き締められたい、という衝動に。それはほんの一瞬の、馬鹿げた心の迷いだった。小さいころから、父に抱き締められたことなど、一度もない。

「時間だ」父が言って顎に当てた手を引き、『一瞬』は過ぎ去る。父はしばしのあいだドラコの目を覗きこんだのち、軽く嘆息し、杖を向けた。「インペリオ!」

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