このFicは、「They Eat Horses,Don't They? -カナダ先住民の知恵- 」の、
有名なフレイザーの台詞の深読みです。
私も思いましたよ、レイったらどうして最初の案を採用しないの?って。
で、やってもらいました。
ぴったりと体を寄せ合い、体温を交換しあってもらっちゃいました。
もう、このあたりは趣味ですね。
はい、すいません。
だけど実は書いていて、すっごく楽しかったんですよね~、このFicは。
だって、ず~っと二人の台詞だけで話が続いてゆくし、
あんまり大した事件も起こりませんし…。(だめか、それじゃ…)
一番楽しかったのは(楽しいって言うな!)フレイザーに抱かれて感じてしまうレイの描写。
ふふふ、すけべな私は、きっとフレイザーのお肌って滑らかで、気持ちいいぞ~なんて考えておりました。
あぁ、どうしようもないなぁ。
それに、このFicも、微妙に同意に基づいていないですよね。
結構このフレイザー、むりやりやってます!
これは、レーティング、Rでしょう。
意外と軽めかなぁ?と思ったのですけれど、
いかがでしたでしょうか?
えっと、これを書いていたときは、私、確かBackstreet Boysを聞いていたような気がします。
どうしてか、自分でも不明…。だけど、そんな雰囲気です。
Ways of Surviving
Category: Humor
Rating: R
Warning: m/m
Pairing: Fraser/Vecchio
「They Eat Horses Don't They?-カナダ先住民の知恵-」より、冷凍室に閉じ込められた二人のその後…。
微妙に同意に基づかないeroticな描写があります。苦手な方は読まないでください。
食肉工場の現場検証が始まり、制服組が決められた手順で仕事をこなしだすと、ベッキオは早々にその場を後にした。
フレイザーもそれに気づき、ベッキオの後を追う。
後ろも振り返らず、早足でベッキオはリヴィエラに乗り込んだ。
慌てて助手席に滑り込んだフレイザーがシートベルトに手をかける間も待たず、ベッキオはアクセルを踏み込んだ。
フレイザーはちらとベッキオの横顔を見た。
「もしかして、レイ、怒ってる?」
「あぁ。」
「そうか…。僕が原因?」
「わかってんなら聞くな。」
ベッキオがぶっきらぼうに答える。
フレイザーは叱られた子供のように、項垂れた。
「ごめん。」
ベッキオは大きく息をはいた。
「何で怒ってるか、教えてやろうか?」
フレイザーが頷く。
「一体どういうつもりなんだ?何であんなことした?」
「どんなこと?」
ベッキオがあきれたように一瞬天を仰いだ。
「冷凍室でのことだよ。まさか忘れたわけじゃねえだろうな!」
「ああ…。覚えてるよ。」
フレイザーの頬がかすかに赤く染まる。
「じゃ、はっきり答えろ!何であんなことした?」
「あの時はあれ以外、助ける方法がなかったんだ。」
ベッキオの肩ががっくりと落ちた。
「俺を何だと思ってるんだ?お前は誰にでも命の危機が迫っていたら、ああいうことをするっていうのかよ?」
「それ、どういう意味?」
「俺が今、どんな気分か教えてやろうか?」
フレイザーが頷く。
「お前にレイプされたみたいな気分なんだよ!」
「レイ、それは言いすぎだ。確かに似たようなことがあったかもしれない、だけどあれはレイプというにはあまりにも…。」
「あまりにも何なんだよ。俺に言わせりゃあれはれっきとしたレイプだ。いいか?親友と思ってる奴にレイプされたんだぜ?今の俺の気持ち、お前、想像つくか?」
「ごめん…。」
「謝ってすむかよ、一体どういうつもりだったのか、説明できるならやってみろ。」
「イヌイットは、極限状態でどうすれば生き抜けるかちゃんと知っている。あれは、あの方法はああいう状況では極めて有効な手段なんだ。生存率は他の方法より、確実に高くなる。他に方法がなかったんだよ、レイ。」
「他に方法がなかった…か?じゃ、お前達は、ああいうときは誰かれかまわずああいうことをするっていうのか?」
今度はフレイザーがため息をつく番だった。
「確かに僕は少しやりすぎた。だけど、あれは君のほうが先に反応を…。」
言いかけたフレイザーの言葉尻をベッキオは強引に奪う。
「ああ、そうだよ。俺が先に反応しちまったんだよ。だけど、だからってお前、ああいうことをするのは、だな…。」
言いかけて、ベッキオの脳裏にあの感触が甦った。ベッキオの頬が真っ赤に染まり、そのまま何も言えなくなる。
しばらく二人は黙ったままだった。車内には低く唸るリヴィエラのエンジン音と、後部座席で我関せずと窓の外を見ている狼の息遣いだけが聞こえていた。
「ベニー…。」
ベッキオが沈黙に耐え切れず、先に口火を切った。
「これだけははっきりさせてくれ、お前は他の誰かとああいう状況になっても、俺にしたように、…同じことをするのか?」
フレイザーはしばらくじっとベッキオの横顔を見つめていた。
その視線に、くすぐったいものを感じ、ベッキオはもぞもぞと身をよじった。
「どうなんだよ。他の奴とも、お前…。」
フレイザーがふと微笑んで、ベッキオから目を離した。
「何笑ってんだ!」
「ごめん、レイ。ちゃんと説明するよ。僕もその方がいい。悪いけど、車を止めてくれないか?」
怪訝な表情で、ちらと横目でフレイザーを見ると、ベッキオはハンドルを切った。
ひっそりと静まり返った湖を望む公園の中にリヴィエラを止めると、ベッキオはハンドルに両手を乗せたまま、闇の中にうねるミシガン湖の湖面を見つめた。
フレイザーの押さえた声にじっと耳を傾ける。
「さっきの説明は完璧じゃない。確かにイヌイットは思いがけず極寒の中に取り残され、身を暖める術が他になにもないとき、ぴったりと肌を寄せ合って、体温を交換しあい命を永らえさせる。だけど、僕が君にしてしまったような、あんなことは…、きっと誰もしないよ。もちろん、僕だって他の誰かになんて、絶対にしない。」
ベッキオがゆっくりと首をまわし、フレイザーに向き合った。
「君を助けなければと思ったんだ。絶対にこんなところで君を死なせはしないって、心の奥からそう思った。たとえ、僕の命がなくなろうと、なんとしても君を救いたかった。最初君が選んだのは二番目の案だったね。肉に包まるのは、あまりいい方法じゃない。肉が凍ってしまって、役にたたなくなってしまうからだ。そうなると逆に体温を奪われることになる。そんなに時間がもたないんだよ。だけど、いやがる君を無理に抱くわけにもいかないだろう。もしかしたらもっと早く奴らがドアを開けてくれるかもしれなかった。だけどそんな僕の願いもむなしく、時間は過ぎていってしまった。後は直接肌を密着させ、体温を交換しあうしかなかったんだ。お互いの体温がお互いを暖めあってくれる…。」
「あぁ、そうだな。」
ベッキオはあの冷凍室でのフレイザーとの一瞬を思い出していた。
飛び込んだ冷凍室で肉に包まれながら、このまま死んでしまうんだと思った。
なんて惨めな人生の終焉だろう。
ベッキオは凍った頭の中で考えた。
下手な三文小説だって、こんな登場人物の死なせ方はしない。あぁ、家族だっていやだろうぜ。ママの嘆きが聞こえてきそうだ。うちのレイモンドは馬の肉に包まれて凍って死んだの。そんな死に方、冗談にもならないわ。どうしてなの?神様…。
意識が薄れてゆく。そのとき、フレイザーの声が聞こえたような気がした。
そして、力強い腕が自分の体を立たせた。
「フレイザー?」
目の前にフレイザーが立っていた。
「しっかりするんだ、レイ。すぐに暖めるから。」
フレイザーが自分にまかれていた肉を剥がした。冷気が襲ってくる。その上、フレイザーは自分のシャツのボタンまで外しだした。
「おいおい、何をするんだよ。気でも狂ったのか?」
フレイザーは既に自分の制服のボタンも外していた。
そして、いきなり大きく胸をはだけると、ベッキオに抱きついた。
一瞬バランスをくずし、ベッキオは思い切りフレイザーにもたれる形になる。
隙間なくぴったりと素肌を密着させ、フレイザーのたくましい腕がベッキオの背中をさする。
お互いの心臓の鼓動がこすれあう肌を通して伝わってきた。
「レイ、少し辛抱してくれ。直ぐに温まるから…。」
フレイザーのハスキーな押し殺した声が、ベッキオの耳をくすぐった。
やがて密着した肌が、お互いの体温で温まってくる。凍っていた血液が流れ出す。
それに伴い、痺れた脳が活動をはじめ、急にベッキオはフレイザーに抱かれているんだという事実を理解した。
「フレイザー…。」
「黙って、レイ、しゃべると体温が逃げる。」
耳のすぐそばでフレイザーの声が聞こえ、彼の吐き出す息が自分の肩をくすぐる。
脇の下から背中に回された腕が、そっと背中を撫でている。そのかすかな摩擦がベッキオの肌を刺激した。
温かいフレイザーの絹のような肌に、ベッキオは毛穴までとろけるような感触を味わう。自然、息が上がってしまい、余計にフレイザーの匂いを胸いっぱいに吸い込むことになる。
「フレイザー…。」
やっと呟いた声は、自分でもあせるほど震えていた。
「なんだい?レイ…。」
その声に肌が粟立つ。
「耳元で囁くの、やめてくれ…。」
やっとのことでベッキオはそう訴えた。
「ごめん、だけど、この状況では仕方ないよ。」
フレイザーが軽く首を回し、ベッキオの顔を覗き込む形になる。耳の穴にフレイザーの息が吹き込まれた。
ベッキオが身をよじった。
「やめろって。気色悪いだろうよ。」
背中をぞくぞくと何かが這い上がってくる。
ベッキオはやばいと思った。
いつしか激しく体中の血液が流れ出す。
そのベッキオの変化にフレイザーも気づいていた。
「レイ?大丈夫かい?」
「だから、耳に息吹き込むな~。」
「ごめん…。」
「あ…。」
ベッキオの喉から声が出てしまう。
下半身に血が集まってしまう。ますます肌が敏感になってゆく。
フレイザーは自分を押し上げるものに気づいていた。
先ほどからのベッキオの体の変化に最初フレイザーは戸惑った。
しかし、やがてフレイザーの唇が微笑みの形になり、その腕に力が込められた。
「ベニー…。」
ベッキオの口から熱い吐息がフレイザーの首筋に吹きかけられる。
フレイザーの胸の奥が、暖かい思いで満たされてゆく。
ベッキオへの思いが溢れ出す。フレイザーはかすかに頭を寄せて、胸いっぱいに少しきつくなったベッキオの体臭を吸い込んだ。
ベッキオはあせっていた。
はっきりとその形を主張し始めた自分自身に対し、恥ずかしさで一杯になる。
なんとか平静を取り戻そうと、目を開けて、吊るしてある肉の数を数えようとした。
しかしフレイザーは逆にますますきつく、自分の体を抱きしめてくる。
まるで愛撫するかのように背中を撫でる。
その掌の動きを感じようと目を閉じてしまった。
「フレイザー、もう充分温まった。頼むから離してくれ。」
必死でそう訴えてみる。フレイザーの腕から逃れようと身をよじる。
「だめだよ、レイ。せっかくの熱が逃げてしまう。」
「もう充分だって。離せ!」
もう自分自身は、はっきりとフレイザーの体に触れるほど硬く、勃ち上がっていた。
なんとかしなければ。ますますベッキオは焦った。フレイザーの体から離れようと痺れた腕をつっぱってみる。
しかし凍った腕はベッキオが願うほどの力が出ない。
「レイ?」
とうとう、フレイザーが気づいてしまった。
「すまん、ベニー。そういうつもりじゃないんだ。ちょっと、刺激が強すぎて。いやそういう意味じゃなくて…離してくれたら、何とかするから、頼む、離してくれ。」
しどろもどろになりながら、ベッキオが言い訳をしようと無駄な努力をした。
フレイザーはうっとりとベッキオの耳元に囁いた。
「いいんだ…、レイ。恥じることはない。僕にまかせて。」
そういうと、フレイザーはベッキオから身を離した。一瞬凍った冷気が上気した肌を刺す。
「しっかりと腕を回して。そう、それでいい。」
ベッキオ自身の腕でベッキオの上着を重ねるように回させ胸で手を組ませる。そしてフレイザーはついとベッキオの足元に跪いた。
上着の裾に頭を差し入れる。
「何する気だよ?やめろって。フレイザー!」
しかし、言葉とは裏腹に、ベッキオの体はそれを欲していた。
フレイザーは手早くベッキオのズボンのジッパーを下ろすとそっと手を差し入れ、充分に硬くなっていたベッキオのものをやさしく握った。
その瞬間、ベッキオの唇から甘い吐息が漏れた。
冷気に触れぬよう気を使いながら、フレイザーは大きく口を開いて、ベッキオのものを飲み込んだ。
ベッキオが大きくその身を仰け反らせ、かろうじて凍った肉に背中を預けた。
フレイザーの口の中は思ったよりもずっと熱かった。そして唾液をたっぷり使い、それを刺激する。
深く銜え込み喉の奥できつく吸い上げる。
または先にそって舌でくすぐってやる。
的確なフレイザーの技巧にベッキオは夢中になる。
なんでこいつ、こんなに上手いんだ…。
ベッキオは頭の片隅でそう思わずにはいられなかった。
フレイザーは軽く唸りながら、熱心に彼の昂ぶりを貪っている。冷気に触れないように、両手でしっかりと包みながら、同時に根元から膨らみまで揉みしだく。
もって行かれそうな快感の波にベッキオは飲まれていった。
荒い息遣いだけが冷凍室にこだました。
いつしかベッキオの体からはうっすらと湯気が立ちのぼる。
もう寒さも冷気の痛みも感じなかった。
感じるのはフレイザーの口の熱さと舌の滑らかさだけ。
激しく湧き上がる快感の波がずきんずきんとベッキオの体中を駆け巡る。
フレイザーは巧みにベッキオの性感帯を責めて行く。
どくんと大きくベッキオのものが脈打った。
その瞬間、ベッキオは目の前が真っ白になった。
そして、フレイザーの口の中に激しく欲望を放っていた。
フレイザーはそれを全て飲んでしまうと、要領よくベッキオのものを拭い、何事もなかったかのように再びもとの場所へと仕舞うと、素早くジッパーを引き上げた。
きびきびと立ち上がり、ベッキオの両手を外す。
「レイ、大丈夫かい?」
脱力し、荒い息をついているベッキオの頬をそっとフレイザーは撫でた。
ベッキオはぐったりとフレイザーにもたれかかった。
再びフレイザーの逞しい腕がベッキオの体をきつく抱きしめる。
「ベニー。お前って奴は…。」
フレイザーはうっとりとベッキオの囁きを聞いた。
「レイ、冷気を吸わないほうがいい。」
ベッキオが顔をフレイザーの胸に押し当てた。
胸いっぱいにフレイザーの匂いを吸い込む。
ベッキオは安らぎに満たされていた。
このまま死ねるのなら、本望だとすら思った。
神様はなんて粋な計らいをしてくれたんだ?天使に抱かれて死ねるなんて、最高の死に方だぜ。
フレイザーの手がやさしく背中を撫でている。
「ベニー…。」
ベッキオが囁いた。フレイザーは素肌に当たるベッキオの熱い吐息にぞくっと背中が震えた。
ベッキオの首筋に唇をつける。
硬く二人は身を寄せ合った。
もう寒さも感じなかった。心の奥まで一杯に満たされ、暖められ、永遠にこのままでもいいと思い出したとき、ふいに静寂は破られた。
凍った肉で銃弾から身をよけながら、フレイザーは素早く着衣を整えた。ベッキオもそれに習う。
何とか冷凍室から抜け出すと、つるされ、ひき肉にされそうなベディットを救うため、フレイザーは階段を駆け上っていった。
動かない足を引きずりながら、ベッキオはあの冷凍室での出来事を考えずにはいられなかった。一体何が起こったんだ?
あいつはこの俺に何をした?
冷気のせいで凍った脳が見せた幻覚だったのだろうか?
そうであれば、どれほどいいか。
ベッキオは思わずそう願ってしまう。
あのフレイザーが、あんなことをするなんて。
階段を上りきり、思わずその場に座り込んでしまう。
激しい格闘の音に、ベッキオはため息をつくと、もう何も考えたくはないというふうに頭を振ると、加工場のドアをくぐった。
「僕はすごく嬉しかったんだ。君が僕に抱かれて反応している。愛しさにどうにかなりそうだった。あのまま放っておくには危険すぎたし、何とかすべきだと思って…。それで、はしたなくもあんなことを…。」
フレイザーが言葉を切った。
ちらとベッキオがフレイザーを覗き込んだ。
「一生懸命だったんだよ。だけど、やっぱり、…。ごめん。」
「ベニー?」
ベッキオはじっとフレイザーの顔を見つめた。
少し上気し、ピンクに染まったフレイザーの顔は、月の光に照らされて、ベッキオの目にこの世のものとは思えないほど美しく映った。
「俺だけなんだな?」
「そうだよ。レイ。」
上目遣いにフレイザーが自分を見る。
「他の誰にもあんなことはしないんだな?」
フレイザーが微かに頷いた。
「俺があのとき、お前にしたかったこと、教えてやろうか?」
「殴るとか?」
ベッキオが微笑んだ。
「この俺がお前にそんなことしたことあるか?」
フレイザーもベッキオにつられて微笑みを返し、微かに首を横に振った。
そっとベッキオはフレイザーの頬を掌で包み込んだ。
「ベニー…。」
そしてゆっくりとフレイザーに顔を近づけ、やさしく口付けた。フレイザーも瞳を閉じる。
すぐに離れると、じっとフレイザーの顔を覗き込む。
淡い湖の湖面のような瞳と、翠石の瞳が見詰め合う。
「もう怒ってないんだね?」
「怒ってなんかいないさ。ちょっと驚いただけで、俺は…、お前が…。」
「僕が、何?」
「俺だけなんだろ?だったらもういいんだ。」
ベッキオは今度はありったけの情熱を込めてフレイザーに口付けた。
彼の両手はベッキオの背中に回され、激しい口付けに答える。
後部座席にいた狼が、いい加減にしろというふうに唸った。
慌ててベッキオはフレイザーの上からとびのいた。
「忘れてた…。すまん、ディーフ。」
フレイザーはうっとりと瞳を潤ませたまま、身をよじって狼に向き合う。
「ディーフ、焼いてるのか?」
「そんなわけねえだろう?お前、頭大丈夫かよ?」
「レイ…。」
「すまん…。言いすぎた。」
フレイザーは助手席のドアを開け、外に出た。座席を倒すと狼を促す。
狼が素直に車から出ると、フレイザーは跪いて、狼にゆっくりと言い聞かせた。
「ディーフ、悪いけど、少し二人きりにしてくれ…。ステイ!」
狼が従うと、フレイザーは車に乗り込んだ。
しばらく狼はそのままじっとしていたが、やがてリヴィエラが激しく上下に振動し出すのを待っていたように、のっそりと身を起こすと、その場から離れた。
後は二人の世界だった。
狼はそれに付き合う気などなかった。
素晴らしい月夜に、森からは自分を誘うかぐわしい匂い。
ことが終わるころ、戻ってきていればいい。狼は森の中へと歩き出し、彼だけの冒険を開始した。
終わり