『Salvation ――救済―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Salvation.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.
Author: Isis様 (
isiscolo)
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Pairing: Snape x Draco (途中リバあり)
Previous:
これまでのお話Summary:
あらすじ ===
このスラッシュの翻訳は、原作者のIsis様 (
isiscolo) のご許可をいただいて掲載しております。
原作はこちら:
http://hieroglyfics.net/hp/salvation.htm ===
[ << ] [ Main ] [ >> ] ドラコは軽くノックして扉を開ける。
「コニャックはどうだ?」
「ええ、いただきます」ドラコは、コニャック杯に――いつもの小さな混成酒杯ではなく、父と同じコニャック杯に――酒が注(つ)がれるのを見て、妙な満足感を覚えた。
父は愛用の革椅子にゆったりと腰掛け、注意深く整えた中立的な表情を纏っている。しかしドラコは、顕微鏡下に捕らえられた昆虫のような心地がした。父は長いあいだ、ドラコを注視していた。
「誕生日には、我々の仲間に加わってくれなかったが、今度は加わってくれるかね?」
やはりこの話か。「謹んでお断り申しあげます」平静な声を保つためには、非常な努力が要った。父親の要求を拒むことが、これほどまでに難しいとは。ドラコは、七歳のような気分に襲われた。十七歳にもなったというのに。
「理由をお聞かせ願ってもよろしいかな?」
「ただ単に嫌だからです。家系に欠点があるからって、普通にいい魔法使いを殺すのは嫌なんです」
「マグルや穢れた血どもの高潔な運動に、心を寄せるようになったというわけかね」
ドラコは肩を竦(すく)める。「マグルはべつにどうでもいいですけど、純血でなくては魔法を使ってはいけない、っていう法もないじゃないですか。べつに、穢れた血どもと友達になりたいというわけじゃないですけど、だからって、殺す必要はないと思います」
「友人どもとやらに、拐(かどわ)かされたとみえるな」陰険な表情が、父の顔を過る。「もしくは、恋人、とやらに」
ドラコは反応しないよう、自分を律した。「友人たちからは、偏見を克服することを学びました」
「ほう、そうかね」父はコニャックを啜る。「自分の血筋を軽んじることを学んだようにみえるが。忠誠心の拠り所を忘れるように――父に逆らうように――」
「僕は、己の信条に忠実なだけです」己の心に忠実であれ、だ。
「して、その信条とは?」
「名誉」ドラコは、挑戦的な調子で始める。「大志。栄光」
「愛、か?」父が嘲るように言う。
ドラコは口を緘(かん)する。
「セブルス・スネイプ」父は、その名前が酸いかのように吐きだした。「まさか、奴に愛されているなどと、初心(うぶ)なことを考えてはおるまいな」
ただの憶測だ。落ち着け。
「知っていると思うが、あいつはひどい嘘つきだ。そして裏切り者。あのダンブルドアの間諜(かんちょう)だ。欲しいものを手に入れることに掛けては、非常に長けていやがる。奴が何を手に入れたがっているか、知ってるか?」今や父は、笑みを浮かべていた。冷酷な薄笑いを。
「先生は、僕の寮監です」
「奴はお前を犯っているんだ」父は悪意に満ちた声で言う。「しかし、あいつが本当に手に入れたがっているものが何か教えてやろう、ドラコ。奴がお前を犯るのは、私を思いださせるからさ」父の瞳が捕食動物のように光る。獲物に飛びかかろうとする、雪豹のように。
「馬鹿々々しい」思わず口を突いて出てしまった。こんな話し方をする父を、初めて見た。下卑た言辞、それでいて静かに脅迫するような声の調子。
「そうかな?教えてくれ、ドラコ。あいつは未だに鎖骨を舐めてやると、子猫のように喉を鳴らすかね?乳首を噛まれるのが好きだということには気づいたかい?達くとき、今でも目を大きく見開くかね?」
ドラコは床を見おろす。不快で重い玉が、腹に沈んでいくような気がした。
「あいつは巧いだろう、なあ、ドラコ?」口角を引き攣ったように上げ、歪んだ笑みを浮かべたまま、父が身を乗りだしてくる。「五年近く、弄んでやったのだがな。捨てたときには随分と心を乱していたものだ。未だに克服できていないのではないかな」
腹に沈んだ不快な玉が、質量を増す。セブルスが。父が。繊細なグラスは、手のなかで砕け散った。掌が、血とコニャックに塗(まみ)れる。
「奴の胸に彫(え)りつけてやった素敵な模様は、気に入ってくれたかね?治療しようとしないのは、私の思い出が詰まっているからさ。お前が私を思い起こさせるのと同様にね」
「下種め」ドラコは囁いた。床が傾(かし)ぐ錯覚に陥る。
「たまに忘れて、お前をルシウスと呼ぶことはあるかい?」
ドラコは叫びだしていた。「下種野郎!下種野郎!」
「あいつのことかね?それとも私かね?」
言葉にすらなっていない呻きが漏れる。「どっちもだ」息ができない。セブルスが。父が。
父の声は、愛撫のように肌を撫でた。「お前には話さなかったとみえるな。そうではないかと思っていたところだ。あいつはお前を利用しようとしているのだ、分かるな。だが私が、恨みを晴らす手助けをしてやろう」父が肩に手をかける。
ドラコは激しく身震いをした。「触るな、下種め」震える手で杖を求め、隠しを探る。しかし、父の方が早かった。
「ステューピファイ」
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