『Salvation ――救済―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Salvation.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.
Author: Isis様 (
isiscolo)
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Pairing: Snape x Draco (その内リバあり)
Previous:
これまでのお話Summary:
あらすじ ===
このスラッシュの翻訳は、原作者のIsis様 (
isiscolo) のご許可をいただいて掲載しております。
原作はこちら:
http://hieroglyfics.net/hp/salvation.htm ===
[ << ] [ Main ] [ >> ] スネイプは眠らなかった。傍らで静かな寝息を立てるドラコを見つめる。長いあいだ、見つめる。掛け布団が繊細に上下する様を。銀髪が、濃緑の寝具に描きだす模様を。銀と緑――スリザリンの色。光と影。救済と破滅。
「道徳が聞いて呆れる」スネイプは独り言(ご)ちながらそっと寝台から滑りでて、脱ぎ捨てられた衣服を身に着けた。杖の一振りで蝋燭を消し、居間に戻る。杯にはウイスキーが少量残っていた。これを一息に飲み干し、革張の肘掛椅子に凭れこむ。次いで本を取りあげたが、目は活字をなぞるばかりだった。
ルシウスの役割を、父親的役割を、本来演じるつもりだったのである。ふん、つもり、か。やはり毅然とした態度で、道義に適った道から一歩たりとも外れるべきではなかったのかもしれない。しかし、断固たる決意を持ってぶつかってくる少年に――青年への一歩を踏みださんとしている少年に――理を説くのは容易ではなかった。己の欲望が、誘惑を囁きつづけていればなおさら。
やがては目的が手段を正当化するだろう。復讐。欲望。情欲。
そう、スネイプはルシウスの立場に立っていた。過去におけるルシウスの立場、誘惑者の立場に。正しいがゆえではなく、愛しているがゆえに従うべき対象――。それは、かの日魔法薬学の授業中、成らんと希求した金(きん)ではなかった。否、金ではなく軟鉄――方位針を狂わせる軟鉄。
もっと早く引きかえしていたら。しかし最早遅い。今、身を引くことは、ドラコを捨てること――裏切ること。己の魂の救済は、彼の魂を破滅せしめること。ドラコは、美しい唇に悲痛な笑みを浮かべて、闇の世界へと身を投じるだろう。
そして、問題は再び己の欲望に戻るのである。この年月、鋼の意志と胸に残る過去の苦味を糧に、肉体を精神の僕(しもべ)としてきた。黒装束の障壁と、礼節の裏に肉体を閉じこめて。しかしドラコが耳元でその欲望を囁いたとき、体内の獣(けだもの)が開放を求め爪を立て、胸を内から引き掻いたのだ。責任をも道徳をも顧みない野獣。肌に肌を寄せ、熱に熱を持ち応えることのみを求める猛獣。今や獣の檻は開け放たれた。あるいはスネイプ自身が獣になり果てたのか。
寝室へ続く扉に衣擦れの音を聞き、スネイプは顔を上げる。銀色のローブを無造作に羽織り、乱れ髪のドラコが遠慮がちに立っていた。「セブルス?」
スネイプは本を置いて立ちあがる。「起きたのか。それは良かった。さあ、部屋に戻りなさい」ドラコの顔に寂しげな影が過るのを見て、優しく言葉を継ぐ。「その格好で明日の朝、私の部屋から出ていくのを見つかったら、言い逃れはできまい」
「一緒にいたいんです」
「また今度な」そう、また今度。また今度があるだろう。沢山の今度が。
「こちらへ」手を差し伸べると、ドラコは歩み寄り、頬を胸に押しつけてきた。スネイプは白金色の髪に口づける。
「さあ、行きなさい」
ドラコは静かに立ち去った。きっとまだ疲れているだろう。スネイプも同様に疲れていた。しかしその夜、眠りが訪れることはなかった。
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A/N:
日本語で表すと、先生の頭の中はつくづく漢字で一杯ですね…。
Lala
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