Salvation Ch. 1 >4

Mar 05, 2006 02:03



『Salvation ――救済―― 』 の翻訳第四弾です。Here is the fourth part of the translation of Salvation.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Isis様 (isiscolo)
Rating: その内18禁 (to-be NC-17)
Pairing: Snape x Draco (その内リバあり)
Previous: これまでのお話
Summary: あらすじ

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このスラッシュの翻訳は、原作者のIsis様 (isiscolo) のご許可をいただいて掲載しております。
原作はこちら: http://hieroglyfics.net/hp/salvation.htm

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日々は、いつものごとく――スネイプに言わせれば早すぎる速度で――過ぎ去っていく。彼は義務の重みに縛られ、休息を取ることも心を休めることもままならずにいた。ある晩夕食の席でスネイプは、ミネルバ・マクゴナガルに、自分は寮監の資格がないのではないかと、硬い面持ちで洩らした。

「何を馬鹿なことを、セブルス」ミネルバの声は例によってきびきびしている。「私たちは最前線にいるのよ。任務を果たさなくては」

「先週、クラッブの誕生日があったんだ。彼が週末に、ホグズミードより遠くまで行ったのは間違いない」

ミネルバは頭を左右に振った。「驚きはしないわ。選別(トリアージ)方法よ、セブルス――優先順位を付けて、救える者だけでも救わなくては」

しかしスネイプは、一人の生徒すら救えるかどうか自信がなかった。ある午後彼は――パーキンソンに冷たくでもされたのだろうか――片隅で啜り泣いているミリセント・ブルストロードを見かけ、研究室へ茶に招いた。が、この馬鹿な子は顔面蒼白になって震えだしたので、スネイプは彼女を退出させるほかなかった。生徒に親切にするのは、スネイプの性分に合わなかったし、スネイプに親切にされるのは、生徒たちの性分に合わなかったのである。

しかし、希望の光が全くないわけではなかった。マルフォイは双子のトロールたち――スネイプはクラッブとゴイルを、密かにこう呼んでいた――の存在を疎ましく感じはじめているようである。これは明るい兆候だった。二人といるとき、マルフォイは苛々して不機嫌そうだった。もしかしたら彼は、父親に従ってヴォルデモートの配下に付くという予想を裏切ってくれるかもしれない。

スネイプはここ最近、彼を具(つぶさ)に観察していた。そして、なぜかマルフォイもまた自分を観察しているという妙な気がしてならなかった。裏切者のスネイプ、謀反人のスネイプ――ルシウスは少年にありとあらゆる醜聞を吹きこんでいるに違いない。それが真実であることは、この際問題ではなかった。問題なのは、その帰結である。

グリフィンドールとスリザリンの二時限続きの魔法薬学――それは緊張している生徒たちやら煮こまれた材料やらで、上を下への悪夢だった。水仙と樟脳とタールの匂いが犇(ひし)めきあい、ディーン・トーマスの脇の床には筬虫(オサムシ)の鱗粉が散乱している。彼の大鍋は気味悪くしゅーしゅー音を立てはじめていた。

「トーマス君、何か問題でも?」

近づいてくる薬学教授の冷たい視線を浴びた少年は、緊張に身を硬くした。「あ、あの、いえ」

ハーマイオニー・グレンジャーが隣の机から身を乗りだす。「ほら、私のを使って。自分の分はまた挽いて作るから……」

「もうそれで結構、グレンジャーさん。グリフィンドールから十点減点」

スネイプが背を向け戻ろうとしたそのとき、マルフォイが大きな声で囁くのが聞こえた。「そうそう、お前らはせいぜい仲良くやるんだな、穢れた血ども」

スネイプはさっと振りかえる。「そして君は居残りだ、マルフォイ君」

教室が水を打ったようにしんとなった。スネイプはゆっくりと見渡し、部屋中の視線に気づく。ウィーズリーは今にも吹きだしそうに身を捩じらせており、グレンジャーは彼を牽制するように睨みつけており――頭の良い子だ――その他は呆気に取られていた。特にドラコ・マルフォイが。

「その薬液を何とかしたらどうだ、トーマス君」スネイプは静寂に向かって言った。

「世も末だな」ドラコが廊下で人混みを押し分けていると、ロン・ウィーズリーが大声で言う。ウィーズリーは隣のポッターの脇腹を小突いた。「スネイプのお気に入りのマルフォイが、居残りだってよ」

「黙れ、ウィーゼル」

「スネイプは寝台の逆側から起きたか何かで、虫の居所が悪いだけじゃないのか?」とポッターが言った。

ウィーズリーは、ふんと鼻を鳴らす。「スネイプはいつだって虫の居所が悪いさ」

ドラコは追い越し様に二人を睨みつけ、数占学教室への階段を上った。何てしようもない二人組みだろう。しかし、ドラコ自身予想外だった。今まで何から何まで見逃してもらっていたのに、たった一言の悪口で居残りとは。寝台の逆側から起きたか何かで虫の居所が悪いか、そうだな。しかし、ポッターが偶然使ったこの慣用句は、不幸にもドラコの頭から離れない結果となってしまった。というのも、寝台のなかの薬学教授、という情景がドラコの頭に忍び寄り、授業のあいだ中、ベクトル教授の単調な講義から意識を遠退かせたからである。

ここ最近ドラコは、しばしばスネイプ教授のことを考えていた。唐綿(トウワタ)の細い繊維を巧みに梳き解している、長く力強い指。廊下を颯爽と闊歩するときマントが翻る様。冷静で抑制された声の調子――その声は絹綿のごとくドラコを包みこんだ。柔らかく、しかし逃れることができないほど強く。そう、確かに教授は少し不気味だったけれど――長身に鉤鼻、隙のない着熟(こな)しと綺麗に磨かれた爪、そしてそれに似あわないべた付いた黒髪――しかしドラコはそこに何か抗いがたく惹きつけられるものを感じていた。それが何であるか、はっきりとは分からなかったが。それがなぜなのか、定かではなかったが。

とてつもなく退屈な数占学の授業ののち、地下牢教室に向かうまえ、ドラコは教科書を置きにスリザリンの談話室へ寄った。長椅子に凭れていたゴイルは、ドラコに一瞥をくれたが、居残りに向かうドラコに対して何も言わなかった。

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A/N:

文字通りの意味が、掛け詞的に使われている慣用句を訳すのは、難しいです。
It's difficult to translate idioms which are used in their literal meanings as well.

Lala

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translation, salvation, slash, hp

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