長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。
最後におまけです。
これが書きたかったんですね・・。
Voice in the Heart おまけ
コワルスキには新たな悩みができていた。
フレイザーは新しいアパートに早々に引越し、ベッキオはほぼ毎日フレイザーの部屋に泊まっているらしい。それならいっそ一緒に住んでくれればと思わずにはいられない。
今日もまたあの話かよ。
フレイザーの赤い制服を目にし、コワルスキは覚悟を決めた。
「お早う、レイ。」
狼を伴い、フレイザーは車に滑り込んだ。
シートベルトを締めるのも待たず、フレイザーのおしゃべりが始まる。
「聞いてくれ、レイ。レイったらひどいんだ。マグカップを洗わないでそのままシンクに置いてしまうんだよ。コーヒーの汚れってこびりついて落ち難いんだ。せめて水で濯いでくれっていくら言ってもしてくれないんだ。お陰で僕は朝からごしごしマグカップを洗わなくてはならない。それに靴下も脱ぎっぱなしなんだ。君だってそんなだらしのないことはしないだろう?何度言っても直そうとしないんだ。ひどいと思わないかい?」
最近ずっとこの調子で、コワルスキは自分がしたことに今更ながら思い切り後悔していた。
適当に聞き流しながら、ぐったりと疲れてゆく自分をコワルスキは感じていた。
コワルスキはベッキオのオフィスのドアを勢いよく開けた。
「どうした?コワルスキ。珍しいじゃねえか、お前が俺に会いにくるなんて。」
余裕のベッキオの表情に、コワルスキの怒りは頂点に達した。
「ベッキオ!お前の騎馬警官をなんとかしろ!」
ベッキオはゆっくり立ちあがりドアまで行くと、開け放たれたドアを静かに閉めた。
「落ち着けよ。フレイザーがどうした?」
「ベッキオ、頼むからマグカップを洗ってくれ。靴下はちゃんとランドリーボックスに入れてくれ。俺のためにそうしてくれ、頼む。」
「なんだそれ?」
「フレイザーが俺に愚痴るんだよ。もう頭がおかしくなりそうだ…。」
ベッキオは笑った。
「コワルスキ、もしかしたらお前、俺がすごくだらしないと思ってないか?」
「思ってるよ。」
「謝るよ。お前にそんな負担を掛けてたなんて思いもよらなかった。いや、フレイザーが細かいことに一々小言を言うのが妙にかわいくってさ。ついつい、色々と探し出してはわざとやっちまうんだよな。これからは気をつける。すまん。」
コワルスキはそのベッキオの返答に歯軋りした。
閉められたドアを破壊するほどの勢いで開けると、部屋を飛び出す。
途中、すれ違う人々に挨拶しながら歩いてきたフレイザーとぶつかってしまう。
フレイザーの顔を見た途端、コワルスキは怒鳴った。
「フレイザー!俺の前でベッキオのことを一言でもしゃべりやがったら殴るからな。いいか?覚えとけよ!」
「どうしたんだい?レイ。」
「うっせえ!!」
コワルスキは激しく後悔していた。
あいつらのことにもう二度と口出ししない!固く、固くコワルスキは決心していた。