この本が大好き。♥
「まーい」
後ろで呼ぶ声がして、振り向くとおばあちゃんがバケツを両手に提げて立っていた。
「さあ、摘みましょう」
すぐにそれが野いちごのことだとわかった。
「これ、すごいね、おばあちゃん」
まいは、目を丸くさせながら立ち上がって、おばあちゃんの方へ歩いた。
「ジャムをつくるんです。さあ、がんばって摘んでしまいましょう」
「わかった」
まいはおばあちゃんと並んで、しゃがんで摘み始めた。おばあちゃんはバケツを重ねて三つも持ってきていた。まいはまさかと思ったけれども、結局最後には、三つとも満杯になった。
おばあちゃんは手を動かしながら、亡くなったおじいちゃんは普通のストロベリージャムよりもむしろこのワイルドストロベリージャムのほうが好きだった話や(おばあちゃんは特に「ワイルド」のところに力を入れたものだ)、おじいちゃんが本当に自然を愛していたこと、特に鉱物が大好きだった話をした。
まいは聞きながら、おばあちゃんはおじいちゃんを失ってからどんなにつらかっただろうと思った。でも、それが本当にはどういうことなのか、少しもわかっていなかったんだ、と、まいはずっと後になって思ったのだった。
赤い野いちごの緑の茎には、ひっきりなしに黒い蟻が登ったり降りたりしている。その実を口に入れると日向臭い甘味があって、ブチブチと何か舌に触る。
「まいのおかあさんは、木いちごのほうが好きでしたよ。そっちは、もう一ヶ月ほど待たねばなりませんけど」
「おかあさんも、こうやって手伝ったの」
おばあちゃんは首を振って、
「あのころは、ここにはこんなに野いちごはありませんでした。おじいちゃんが亡くなった次の年からでしたよ。こんなに増えたのは」
「ふーん」
まいその年のことを想像しようとした。おばあちゃんが、さっきのまいのように、初めてこの一面のルビーの絨毯を目にしたときの感激を。
「まるでおじいちゃんからのプレゼントのようだね」
「本当にそうなんです、なぜなら......」
おばあちゃんは意外なほど真面目な声で言った。
「その日は私の誕生日でしたから。私には、その意味がすぐわかりました。おじいちゃんは、それまで毎年私の誕生日を忘れたことはありませんでしたから」
まいは何と言っていいのかわからなっかたが、とりあえず、
「おばあちゃん、うれしかったでしょう」
と言った。おばあちゃんはにっこりして、
「うれしくて、うれしくて、ここにうずくまって泣きました」
このシーンを読んだ時、なんか、すごく感動した。
おばあちゃん!!。゚(゚ノД`゚)゚。