A simple story for the man who was born to burn.
眩しいのにまっくらだと、アランは感じた。
それは目を閉じているからなのか開いているけれど見えていないからなのかはわからない。
ただ当たり前みたいに不随意みたいに、吐き出す息に声を乗せている。
きっと胎児だったときから歌い続けてきた、腹筋も声帯もいつかは衰える。
限界が訪れるのがはやくても遅くても完全にイカれても、歌うのを止められないのを知ってる。
アランは知っているし、きっとうたう人は誰だって知ってる。
なにしろそうやって世界に自分を繋いできたのだから。
入る器のない自分と世界を繋いできたのだから。
耳が少しずつこの世界の環境に慣れてきて、ひどい騒音だ、作っているのは自分だ、それがわかる。
ふと声が聞こえた。
それが自身のものよりすこし高くて、安定した伸びやかな声だから、ショーンもいることに気づく。
息継ぎに口を閉ざせばボタンアコーディオンが空気を揺らして、そのやり方がボブだとわかる。
一人じゃないと知った途端にぐんと知覚が遠くまで伸びて、錯覚も幻覚もものともしない感覚器官が広がっていく。
クリスの鮮明なドラムも、マリーの明確なバスもここにあって、そうだ覚えている、知っている、器からはみ出したのは決して自分だけではないということを。そしてそのことを、全く後悔していないことを。
だから怖がらずに目を開ける、それができる。
なくし物をしてさんざん泣いて、永遠に続くものなんてないと知った、悲しみに沈んで海に自分を放り投げたかった、うまくいかないことだってたくさんあって、転んで躓いて傷を作って、かっこ悪くてもここまで歩いてきた。
それがそのときどんなに酷い経験に思えても、踏み越えて振り返ってみたら、きっと愛しい。
そう思えるかもしれないから、とりあえず乗り越えてみようと手を伸ばしてくれる仲間がいる。
だからこれからも歩き続けるだろう。
なにしろ、伸ばされる手はひとつやふたつじゃないから。
肌に痛いと思ったら、眩しいのは強い白の照明。
渦巻く波に大声で呼ばれた。
ステージにいることを知った。