a story for Alan's Birthday. Bob meets Sean at the studio. That's that.
スタジオの階段は、実は少し狭いうえに急だったりする。
この土地そのものだ、なんてひっそり苦く笑って、ボブはひとつひとつ段を踏む。
ここを上るときに時々思い出すのはCan't Stop FallingのMV、あの暗い細い階段。
逃げ出すみたいに駆け上がった、大慌てで。完全なばかみたいに。どう考えても笑える。
高いところにある扉を見上げて、暗さを確かめる、片手を壁に添えて踏み出す。
ここには4人がいた。
いまは3人しかいない。
それを思って手すりを握ったのは遠い昔だけれど、4人で続いている現在なら今とは大きく違うだろうと想像する。
どう変わっているかはわからないけれど、何曲かは生まれなかっただろうし自分は未だに歌ってないかもしれない。
それでもひとつの事実はなにも変わらない。
お調子者の愛しいリーダーに振り回されている、その現実だけはそのままだ。
完全を探しながらたどり着けないと信じているし願っている。
そして欠けていると知っているから、こうやって階段を上る。
押したら扉はすらりと開いて、そこにいる人が目線だけ寄越してきた。
ノブに触れた指は動かない、渇いた口は声を零さない。
言い訳は彼には通用しないと知っていたから、息をついて足を踏み出して、閉めるドア。
だから覚悟をしなきゃならない。
階段を駆け上がった、地上に向かって、抱えたアコーディオン、ステップを蹴る足の裏。あんな風には二度と走れない。
けれど変わるしかなくても、3人を5人と数える日はきっと来ない。どんなに近くても違うから。
3人という単位すらひとりの集まりでしかないのだから。
それをみんな、よくわかっているから。
……来ちゃった。
溜めた息にのせて、どうしようもなくて呟いたら、素直でよろしい、ショーンは頷く。
腰掛ける隣、片方差し出すブルーホース。
永遠の都は遠くて主賓も遠いけれど、ショーンの用意したバースディケーキは、2人で食べきるような大きさだった。