ヴィゴ・モーテンセン、監督デビュー作"Falling"・あなたが忘れている過去の役柄・クローネンバーグと再び仕事をすることについて語る

Jul 01, 2021 09:02



ヴィゴ・モーテンセンの俳優としての歩みは、彼を世界的なスターにしたLOTRに出演した時、彼は既に40歳を過ぎていたという点で非常に興味深い。モーテンセンはLOTRの前にたくさんの映画に出演している。つまり90年代の映画をランダムに見ていると彼が現れる可能性があるということだ。まるで彼が時間をさかのぼってそこに身を置いたかのように。パンデミックが始まって以来、みんな様々な映画を見ているので、あなたにもそういうことが起きる可能性は十分にある。というのは私には2度、『ヤングガン2』とシルベスター・スタローン主演の『デイライト』でそういうことがあったからだ。だからもちろん私は彼にこの2本の映画について尋ねないわけにはいかなかった。そして最近発表された『ヤングガン3』を製作しようという取り組みについての彼の考えも。
LOTRから20年が過ぎ、モーテンセンは自分が書いた脚本をもとに初めて映画"Falling"を監督した。彼が言うように自分で脚本を書いて監督した作品を実際に作るところまで来るのには苦労があった。作品は昨年1月にサンダンス映画祭で好評を得てモーテンセンは、さあ、これからだと思っていた。そして...まあ、私たちはみな、その後何が起こったか知っている。
モーテンセンは"Falling"に出演もしている。このドラマで息子(モーテンセン)はランス・ヘンリクセン演じる疎遠になっている認知症を患う父親(控えめに言っても嫌な奴)との関係を修復しようとする。今なおモーテンセンは人々がようやく自分の映画を見る機会を得られるかもしれないと楽観的に考えているようだ。そして2021年後半にはデヴィッド・クローネンバーグ監督と4回目の仕事をすることができると楽観的に考えているらしい。

Viggo:やあ、マイク。元気かい?
Mike Ryan:最近はその質問にどう答えればいいかわからないんだ。
V:今がこんな時代だから?
M:そう、こんな時代だから。
V:そんな中でも気分はいいと言えるんじゃないかな。
M:いいね。
V:何はともあれ気分がいいし、これは新しい始まりなのかもしれない、とかね。
M:そんな気がしてきた。だからそう答えるのもいいかもしれない。
V:ほらね。
M:"Falling"は1年前にサンダンス映画祭でプレミア上映された。1年間この映画と一緒に暮らしてきたように感じる?
V:この業界では僕たちは華々しくスタートしたんだ。とても素晴らしいレビューも得た。それで僕は「ああ、順調だ」と思った。それからカンヌ映画祭の公式セレクションに招待された。これは大きな成果だ。だから僕はこの映画と映画を作るために一生懸命仕事してくれた人たちのために大喜びしてた。そしてそれから全部ダメになった。さらにパンデミックの影響で北米、アメリカとカナダのことが心配になった。「参ったな。もうこの映画を見てもらえないかもしれない」と思った。でも2月5日に公開されることになったよ。実際、ニューヨークのある映画館では今、上映されてるんだ。ニューヨーク州の...
M:ああ、僕はニューヨークにいるんだけど、残念ながら近所には開いてる映画館がないと言おうとしてたんだ。
V:ニューヨーク州のプレザントヴィルでは上映されてるよね?バーチャルで、彼らを通して僕たちはQ&Aをやったんだ。そして2月5日にはオープンしてるごく少数の独立系映画館で公開される。でもほとんどの人はペイパービューやストリーミングなんかで見ることになるだろう。今年はそういうやり方なんだ。
M:実はこれが初監督作だということに驚いてるんだ。なぜこんなに時間がかかったんだい?
V:やってみようとしなかったわけじゃない。実際、最初に自分が書いたオリジナルの脚本を自分で監督して映画にしようとしたのは25年前だった。それ以来、僕は他にも脚本を書いて何度も製作しようとしてきた。資金の一部や半分ほどを集めて、もう少しのところまで行ったこともあったけれど十分ではなかった。"Falling"も2015年に書き始めて、実際に撮影できるまでに何度か試みて4年かかった。でもある意味、これだけ長く待たなくちゃならなかったのは良かったのかもしれない。初めての経験で初心者のやる間違いをたくさん避けられたのだから。
M:たとえばどんな間違い?
V:準備をしないこと。ひとりで決め込んでしまうこと。誰かが君に「そんなことはしなくていいよ。毎日編集に立ち会う必要はない。製作の準備を全部自分で監督する必要はない。あれこれする必要はない」と言ってもやってはいけないという意味じゃない。つまり長年一緒に仕事をしてきた最高の監督たちから学んだことは大きく分けて2つある。1つは撮影の準備は早過ぎることもやり過ぎることもない。2つ目は、良いアイデアはキャストやクルーの誰からでも、いつでも出てくるということだ。それに対してオープンになること。提案や自分では思いつかなかった質問をされてもそれに怯えることはないんだ。
M:君が学んだ監督として思い浮かぶのは?
V:たくさんいる。誰か1人を選びたくはないけれど、むろんデヴィッド・クローネンバーグとは3回仕事をしてる。
M:そうだね。それで君は...
V:彼以上に知的で、技術的な準備ができていて、クルーやキャストとのコミュニケーションが上手い人と仕事したことはない。でも僕は世界の様々な地域出身の女性や男性と仕事をしてきた。彼らは様々なスタイルのアプローチをし、様々な文化的背景を持ち、様々な種類の映画を作ってる。でもこの2つのことは様々な方法で彼ら全員から学んだんだ。
M:それからクローネンバーグの撮影監督ピーター・サシツキーは世界でも最高の1人だね。
V:そう、彼は素晴らしいよ。
M:彼は『帝国の逆襲』を撮ってる。みんな気づいてないけれど。だからあの映画はあんなに美しいんだ。
V:彼は最高だよ。本当に優れたフランス映画も何本か撮ってる。とても優秀だ。また近いうちに一緒に仕事ができたらと思ってる。できれば今年中に。
M:クローネンバーグと?それは楽しみだ。そのニュースは知らなかった。もう発表されてる?
V:いや、まだだよ。たぶん言っちゃいけなかったのかもしれない。でもそれが目標なんだ。
M:まあ、今は良いニュースが必要だよね。
V:全く。
M:素晴らしいニュースだ。
V:うん、最大限努力するつもりだよ。でもクローネンバーグに関して僕が理解できないのは、彼は半世紀近く映画を作ってきて、多くの本当に優れた作品を撮ってきた。明らかに巨匠の1人だよね。現代最高の。
M:そうだね。
V:それなのに彼は自分の作品のための最低限の資金を調達するのに毎回何年も苦労しているんだ。決して高額な予算ではないのに。彼はいつも予算内かそれ以下で、撮影期間内に撮り終える。お金を無駄にしない。彼の作品では損をしない。時には儲かることもある。プロフェッショナルだしクリエイティブな面でも本当に信頼できる。なぜ資金を集めるのがそんなに難しいんだろう?僕には理解できない。なぜデヴィッド・クローネンバーグはアカデミー賞の脚本賞や監督賞にノミネートされたことがないんだろう?僕には不可解だ。でも人生はそういうものなんだ。
M:幅広い意味でストリーミング・サービスが非常に多くの作品を作っているこのちょっと新しい世界では、将来もっと機会が増える可能性があるかな?
V:何の可能性?もっと映画が作られる機会?
M:そう。
V:そうだと思う。でもそれは技術というか、以前に比べて一定の撮影のクオリティを持つ映画をより安く作れるようになったことも関係してる。いろいろなことが起こりえる。一方でパンデミックによって映画館の観客が消えるとは思わない。
M:僕もそうは思わないな。その通りだと思う。
V:そのための市場は常にあると思う。(映画館での)経験を愛してるのは僕だけではないと思うし、君もそうだろう。君の家のサウンド・システムやスクリーンがどんなに素晴らしいものでも取って代われるものではない。理想的に言えば(人を)夢中にさせる儀式的なものがある。映画館に行くだけで希望の持てる行為になる。映画館に入り、灯りが消え、見知らぬ人たちと一緒に座っている。何人かとあるいは1人で。
M:そうだね。
V:君は自宅ではない場所の暗闇の中に座っている。何が起こるだろう?僕が見ているものは僕を数分、または数時間、あるいは何日間も映画館を離れてどこかへ連れて行き、それまでとは違う感じ方ができるかもしれない。自分自身と世界における自分の居場所について、より豊かな見方ができるようになる。それが僕たちの望むことであり、これからも消えることはないだろう。映画館チェーンは廃業し、独立系の映画館の中には苦戦するものもあって他の映画館に取って代わられるだろう。でも映画館はずっと存在し続けると思う。
M:そしてこのパンデミックが、できればすぐにでも終わったら、みんなが「いや、今夜は家にいたい」と思うとは想像できないな。みんなまた外に出たくなると思う。
V:そうだね。そう思うよ。ライヴ・ミュージックも同じだ。
M:僕が今、何よりもやりたいのはブルース・スプリングスティーンのコンサートに行くことだ。
V:行けるようになると思うよ。僕たちは、ここしばらくの間検討されてる正しい対策をとって、気をつけて生きて行かなくちゃならない。残念ながらそれを否定してる人たちがたくさんいる。あるいは人々に否定させたいという既得権を持つ人たちもいる。幸い、この国では新しいページがめくられて、僕たちはようやく真剣に取り組むようになると思う。
M:ところでパンデミックが始まって以来、僕はたくさん映画を見たり見直したりしてるんだけど、君が出演してるのを忘れてた映画が2本あったんだ。君の経験を教えてもらえる?まずは『ヤングガン2』。



V:とても楽しかったよ。うん、89年の終わりに撮影を始めて90年の初めに終わったんだ。思い浮かぶことが2つある。1つは、僕は子供の頃、馬に囲まれて育ったんだけど、その後何十年も馬とは縁がなかった。好きだった馬とまた親しむ機会をこの映画は僕に与えてくれた。西部劇と言うジャンルも好きだ。撮影したニューメキシコやアリゾナも気に入ってた。とてもいい経験だったよ。
M:他の俳優たちより乗馬が上手かったの?
V:おそらくあまり経験のない人たちよりは上手くこなせたと思う。乗馬を楽しんだよ。休みの日にも出かけて行って、馬の世話をする人たちと仲良くなって、違う馬にも乗れるか聞いたりした。いろいろな種類の馬に乗れば乗るほど良い乗り手になれるから。歩き方や気質が違う馬に合わせるんだ。とても素晴らしかったし楽しかったよ。景色もきれいだった。この映画のことを持ち出されてもう1つ思い出すのは、ショーン・ペンが『インディアン・ランナー』への出演を僕に打診してきたことだ。
M:えっ?
V:彼は『想い出のジュエル』という映画で僕を見て、脚本を送ってくれた後、僕に会いにアリゾナまで飛行機に乗ってきたんだ。その映画での僕の役は小さかったけれど、役の何かが彼に『インディアン・ランナー』の役に僕がふさわしいと思わせたんだろう。それが僕が真っ先に思いつくことだ。
M:1週間ほど前に『ヤングガン3』の製作が発表されたのは見た?
V:いや、それは見てない。誰が出演するんだろう?
M:エミリオがメキシコで撮影場所を見つけたと言ってた。
V:ビリー・ザ・キッドは撃たれてなかったことにするつもりなのかな?
M:そうだと思う。『ヤングガン2』ではビリー・ザ・キッドが年配の男性になって人々に自分はビリーだと言うシーンがあったよね。多分その線で行くんじゃないかな?推測だけど。
V:ああ、それならわかる。
M:映画『デイライト』については何とでも言えるけど、ロイ・ノードは時代を先取りしたキャラクターだよね。
V:そうだね。若い頃のドナルド・トランプと親しくつき合ってたかもしれない。わからないけど。作品に参加してクライミングや何かについて学ぶのは面白かった。つまり僕はもともとあまり社交的な人間じゃないし、人前でスピーチしたりするタイプでもない。そういう意味では外交的じゃないんだ。俳優なのに変だと思われるかもしれないけれど、でも多くの俳優に当てはまるんだよ。
M:少なくとも僕の経験では、君は意見を言うことに困ったことはないよ。いつも何かについて考えてるよね。
V:ロイ・ノードもそうだよ。まあ、彼は自慢ばかりしてる奴だけど。
M:そうだね。



V:彼は自分を表現し、売り込む方法にすごく自信を持ってるんだと思う。その点、僕は少しばかり飛び込まなければならなかった。ちょっとした挑戦だったけれど、それを楽しんでた。僕たちはイタリアで撮影してたんだけど、イタリアはとても美しかった。気に入ってたよ。この映画のことを考えると、同時にジェーン・カンピオンの映画『ある貴婦人の肖像』のことを思い出すんだ。
M:あ、そうなんだ。
V:なぜかって言うと、ジェーン・カンピオンの映画の役をもらっていたんだ。大きな役じゃないし、出演料もそれほどじゃないけれど製作には数ヵ月かかった。だからもしその映画だけに出演していたら、出演する前よりも借金が増えてしまう。だから他の映画も探さなくちゃならなかった。幸い『デイライト』が撮影中で、あの役をもらって同時に撮影してた。だからちょっと精神分裂みたいだった。『デイライト』を撮影して一日の撮影が終わると車を運転してイタリアの反対側に行った。そしてカツラをかぶってジェーン・カンピオンのためにキャスパー・グッドウッドを数日間演じるんだ。それからローマにもどってチネチッタ撮影所でロブ・コーエンのために『デイライト』の撮影を続けたんだ。
M:さて、ようやく"Falling"が公開されることになってうれしいよ。君は自分の映画を作ったけれど、その後パンデミックが起きてしまった。でも観客はこの映画を本当に楽しむと思う。
V:1つ、すごく気になってるのは俳優たちがちゃんと評価されるかどうかなんだ。4歳のグラディ・マッケンジーから80歳のランス・ヘンリクセンまで。
M:ああ、この作品のランス・ヘンリセンは素晴らしいよ。本当に。
V:ランスは特に後世に残る演技だと思う。今年の、あるいはここ久しく他に誰もやったことのないような演技だ。彼が成し遂げたのは本当に素晴らしいことだと思う。不穏で、重層的でニュアンスに富んでいて。本当に勇敢な演技だ。だから彼が正当に評価されるためだけでも、みんなにこの映画を見てもらいたいと思うんだ。

元の記事はこちらです。

https://uproxx.com/movies/viggo-mortensen-interview-falling-david-cronenberg-young-guns-ii-daylight/

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