テーマ:「Christmas & New year drabble 特集」
さて今月もdrabbleコンテストの時期となりました。前回ご参加くださった皆さん、ありがとうございました。このエントリーのcommentに、お好きなペアで今回のテーマに沿ったdrabbleを書いてください。また、drabbleは書けなくても感想は書ける、という方も大歓迎です。投稿されたdrabbleに返信する形でdrabble作家さんに感想を贈ってください。
///投稿方法///
タイトルを入れてください(『無題』などは控えてください)。
タイトルと本文の間にこのような形↓でジャンル(ペア)、断り書きを添えてください。ジャンルもペアも映画/海外ドラマ/スポーツ/RPS/歴史であれば構いません(ただし、
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Football(T.Frings/M.Ballack)
Disclaimer: It's absolutely a fiction.
クリスマス・イブの午後、トルステン・フリンクスは門のインターフォンのチャイムが鳴るのを聞いた。
居間には妻のペトラの姿がなかったので、トルステンは眠っている娘のレナの頭をそっと自分の膝から降ろして、ソファから立ち上がった。
インターフォンのモニターのスイッチを入れ、「どなた?」と言いかけたトルステンの目に映ったのは、ミヒャエル・バラックの躊躇いがちな笑顔だった。
「ミーヒャ……」
「ちょっと外に出て来ないか?」
その辺りにあったグラウンド・コートを羽織り、トルステンは門へ急いだ。
昨夜のペトラの言葉が耳に甦る。
『シモーネと子どもたちはこっちに帰って来ているの。二年も続けてドイツを離れてクリスマスを過ごすのは、子どもたちにも良くない気がするって……。でも、ミーヒャは帰れないんですって。プレミアリーグって、クリスマスの翌日から試合があるの?……』
ダウンジャケットを着込んだミヒャエルは、門のところに佇んでいた。
「お前は帰れないって、シモーネが……」
門扉を開けたトルステンの身体を、ミーヒャが抱き寄せる。
「どうしてここに……?」
「黙って……」
ミーヒャの唇がトルステンの唇に重ねられた。それは、ほんの一瞬のできごとだった。
「ミーヒャ……?」
「メリー・クリスマス」
「何しに……?」
ミーヒャは少し身体を引いて、トルステンの瞳を覗き込んだ。
「戻らなきゃいけないんだ。明日のトレーニングに出ないと……」
「えっ?」
「お前の顔がどうしても見たくなって……」
「それだけのために、ここに?」
「ああ」
「バカな……」
「怪我はどうなんだ?」
ミーヒャがトルステンの足元に視線を落とした。
「ウィンターブレイク明けには、試合に出られると思う」
「そうか、良かった」
「どうしてもバイエルンには負けたくないんだ」
ミーヒャはトルステンの頬を軽く叩いて、「ああ」と言った。
「そっちこそ、ちゃんとチャンピオン・リーグに出られるんだろうな?」
「当然だ」
トルステンはふと我に返って、笑みを洩らした。久し振りに会ったというのに、結局はフットボールの話にしかならない。
「家に寄っていく時間はないのか?」
「ああ。もう空港に向かわないと……」
「そうか」
「そうだ、手を出して」
ミーヒャがジャケットのポケットから小さな何かを取り出し、トルステンの掌に乗せた。
「何……?」
「ロンドンの家の、クリスマス・ツリーの下に落ちてたんだ。何だかお前に似てて、それで、どうしても会いたくなって……」
それは、ガラスで出来た天使の形のオーナメントだった。
「ほら、この片方の翼がちょっと歪んでるところが、お前っぽいな……と思った」
トルステンはその天使を握り締める。
「ミーヒャ」
「うん?」
トルステンは自分より2インチほど長身の男の肩に手を置いた。
「メリー・クリスマス、そして、良い年を」
そう言って、今度はトルステンの方からミーヒャにキスをする。
「気を付けて戻れよ」と、顔を離したトルステンが言った。「道がところどころ凍結しているんだ」
「ああ」
ミーヒャが身体を離した。「またな」と言って、少し離れたところに停めてあるアウディに向かう。
トルステンは車が見えなくなるまで、門のところに立っていた。そして、手の中の天使が、ガラスで出来ているのにまったく冷たくなかったことに気付いた。ミーヒャもずっとこれを握り締めていたのかもしれない、と思う。
天使を握ったままの片手をコートのポケットに突っ込み、トルステンは家へ引き帰した。
The end.
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こんばんは、るかっちです。
クリスマスにはフリンクス一家は(例のごとく?)アメリカへ遊びに行ったんじゃないのか……とかの突っ込みは置いておいて。
ジンさん、今回も楽しい企画をありがとうございます。
そして、ついでのようで何ですが、みなさまへ。
Buon Natale e Felice Anno Nuovo!
Reply
しかし二人とも、奥さんの居ぬ間に! わざわざロンドンから来るなんて、牛も可愛いとこあるな。
アッガーフィナンといい、またロマンチックな作品楽しみにしています。
Reply
「クリスマス前に」と急いで書いたので、緩い感じになってしまいました。(その上間違いも……“チャンピオンズ・リーグ”だし。)
ロマンチックに締めて
などと言っていただくと、嬉しいやら恥ずかしいやら。
でも、牛さん活躍で良かったです。ニューカッスル戦ではゲーム・キャプテンですか……。シュスターにそそのかされてスペインの「白い(元・銀河系)軍団」なんかに行かなくて正解!と、早く言える日が来ることを祈るわたしです。
遅ればせながら、今年もよろしくお願いします!
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「躊躇いがちな笑顔」「自分より2インチほど長身の男の肩に手を置いた」こういう表現だぁい好きでっす。天使のオーナメントの翼がちょい歪んでいるところとか、ガラスなのにぬくもってるところとか、いいいいなぁ、愛をぬくぬく感じました~。
バラッくとシェヴぁの頑張りでホーム無敗記録が守られたニュース、新聞で読みましたです。
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トルステンの髪型がちょっと天使っぽいかな……というところから思いつきました。天使にしては、かな~りゴツいですけど。
バラックは怪我から復帰後、意外なほど(<「意外」とは失礼な……)活躍しているみたいで、これを書いた甲斐がありました。
「ぬくぬく」していただけたら、嬉しいです。
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