極めて具体的な性描写があります。苦手な方は絶対に読まないでください。
「All The Queen's Horses」より、レイ視点でのその後
あくまでもフレイザーはサッチャーではなくレイを好きだということで…
The Confidence
NC-17
ベッキオはじっと窓の外を見つめていた。
一体自分は何をしているのだろう。
自嘲気味に笑ってみる。
窓の外では、また雪が降り出していた。
最初のきっかけはマイケルの一言だった。
フレイザーはシカゴにやってくる騎馬警官隊を迎えるためにカナダに行っていた。
足元には預かった狼。
久しぶりに気の置けない仲間とのゲーム。
大きなツキが転がり込んできそうな予感…。
そこへ携帯が鳴った。
あいつは俺が言った言葉をストレート解釈して、わざわざ列車から電話してきやがった。
そんなことは一言も言っちゃいねえのに。
確かに様子を聞かせろとは言ったさ、それはシカゴに帰ってきてからって意味だったのに。
ベッキオは思い出していた。
男達が集まっては、ゲームの合い間に馬鹿みたいな話をする。
あの時は女の色気について、話していた。
最近結婚したスワンソンの女房は色っぽいとか、あの腰つきがたまらないとか、他愛のない馬鹿話。
そこへフレイザーからの電話だ。
それを聞いていたマイケルが言った。
「あの騎馬警官は色っぽいよな。レイ、お前、気づいているか?」
今まで思ってもいないことを言われた瞬間だった。
マイケルはいけ好かない野郎だ。ベッキオはゲーム以外、マイケルとは付き合わないようにしていた。
それが、あの時、まるで目の前にフレイザーがいるような表情で、うっとりとフレイザーの色気について話し始めた。
ベッキオの口の中にすっぱい、いやな味がこみ上げてきた。
ベッキオは苦々しく言い放った。
「もうよせよ、気分が悪くなる。」
「お前、ずっとあいつと一緒にいておかしくならねえか?俺ならとっくにものにしてるぜ。」
「黙れ!それ以上一言でも何か言いやがったら、つまみ出すからな。」
「こいつ、妬いてるぜ。」
いつもの冗談のはずだった。どっとその場が笑いで沸いて、それで終わり。
しかし、そうはならなかった。
あいつは簡単にはシカゴに帰ってこられなくなってしまった。
狼を連れて、走っている列車に飛び乗るなんて、馬鹿なことをしたもんだ。
高所恐怖症のこの俺が、一歩間違えば死んじまうようなあんな芸当が出来たのは、一体何故だ?
答えはひとつだった。フレイザーの危機に、俺が何もできないでいるっていうのがたまらなかったからだ。
あいつの側にいてやりたかった。
なのに、なんだ?あいつのあの態度は。
一言の感謝の言葉もなく、あいつの心にあったのはサッチャーのことだけだった。
ディーフがすねるのも理解できるぜ。俺もおんなじ気持ちだったからな。
事件解決からのごたごたの間、ベッキオは完全な部外者だった。
まだしつこくすねている狼と一緒に、現場検証やら後片付けやらの終わるのを待つ。
ぽっぽやが熱いコーヒーを入れてくれた。すっかり始末がついたのは、もう帰る足もなくなった夜中だった。
それまで、ただ、ぼんやりと忙しそうなフレイザーの様子を見ていた。
ベッキオはぐったりとベッドに腰を下ろした。
そういえば、あいつと口を聞いていない。
事件が解決してから、一言も。
「一体何しにきたんだ?わざわざこんな片田舎まで、この俺はさ…。」
声に出して愚痴てみる。むなしさがこみ上げてきた。
ベッドに仰向けに寝転がる。何でこんなとこまで来たんだろう。
あいつに何を期待していたんだ?感謝の気持ちか?それとも…。(フレイザーの笑顔?)
何か聞こえたような気がして、ベッキオは身を起こした。
耳をすませてみる。かすかなノックの音がする。
気だるい体を起こし、ドアを開けた。
フレイザーが立っていた。
「まだ起きていたんだね?よかった。」
「何のようだ?」
無意識に声がとがっているのがわかり、自分でも少しいやな感じがした。
「ごめん、起こしてしまった?」
「まだ眠っちゃいねえよ。何か用か?」
フレイザーはすこし節目がちに、言った。
「まだお礼を言ってなかったから。」
「何の礼だよ?俺んとこより、お前が行くべきところは別にあるんじゃねえのか?」
口をついて出た厭味に、うんざりする。
フレイザーが不思議そうに目を見開いた。
「どこ?」
「例えばサッチャーんとことかさ!俺に言わせるなよ。」
「サッチャー警部?どうして僕が?」
「お前ら、いいムードだったじゃねえかよ。」
「レイ、中に入れてくれないの?」
ベッキオはドアの前に立ちふさがり、フレイザーは廊下に居心地悪そうに立っていた。
そういわれて初めて気づいたように、ベッキオはその身を避けた。
フレイザーがそっと目で微笑んで、部屋に入る。
暗い部屋の真中にフレイザーが立っている。外の雪明かりに照らされて…。
まるでそこだけ、ライトがあたっているように、ベッキオの目には映った。
「それで怒っていたんだね?」
「別に怒っちゃいねえよ。ディーフはすねてたけどな。」
「知ってる。まだ僕と目をあわそうとしないんだ。」
「わかるぜ。」
言ってしまってから、ベッキオはしまったと思った。
咳払いをして、言い訳を考える。
「ずっとすねてたんだ。俺と一緒のときから…。」
フレイザーがくすっと笑った。
「警部とは何もない。それより、僕には君が来てくれたことのほうが嬉しかったよ。」
「今更…。」
「どうして、あんな危険な真似を?」
「何のことだ?」
「ディーフを抱いて、走っている列車に飛び乗るなんて、自殺行為じゃないか?」
「お前がいつもやってることだろう?」
フレイザーが一歩自分に近づく。
「僕には無理だ、怖くてできないよ。車とは規模が違う。すごい勇気だね。」
フレイザーの紺碧の瞳が輝く。マイケルの言葉がふいに脳裏に浮かんだ。
「あの騎馬警官は色っぽいよな…。」
薄くひきしまるピンクに色づいた唇。無垢な瞳。形のよい眉に、すっと伸びた鼻筋。
無駄のまったくない、完璧な顔、そして、つややかな真っ白な肌…。
ベッキオののどが鳴った。
また、フレイザーが一歩近づいた。
慌ててベッキオは窓辺へと移動した。
「お前とおんなじだろ?別に大したことじゃねえよ。」
フレイザーはじっとベッキオを見つめている。
熱い視線にベッキオは理性が溶けそうになるのを感じて、あせっていた。
「そんな目で見るなよ。」
「目?」
「まるで、獲物を狙う狼みたいな目だ。」
フレイザーがまたくすっと笑った。その声に背中がぞくっと震える。
口の中がかわいて、声がかすれた。
「なんだかレイ、変だね?」
「変なのはお前だよ。もう帰れ!俺は寝る!」
言ってしまった一言にベッキオはあせった。フレイザーは帰ろうとはしない。
ふいに脳裏にサッチャーと抱き合って馬に乗るフレイザーの姿が浮かぶ。
あの時、ベッキオの胸にあったのは嫉妬だったのか?
目の前にフレイザーがいる。二人きりで、フレイザーは妖しい目で自分を見つめている。
ベッキオの鼓動が早くなった。
呼吸も荒くなる。
腰の辺りから、ぞくぞくするような感覚が背骨を上ってくる。
フレイザーが唇に魅惑的な微笑みを浮かべ、また一歩ベッキオに近づいた。
「レイ、君の脈拍と心拍数が上昇したね。呼吸も乱れているし、体温も上がっているみたいだ。
気づいているかい?体臭もきつくなった。」
「何を言ってる?」
かすれた声でベッキオは言った。ベッキオの視線は魅入られたようにフレイザーに釘付けになる。
「それを生物学的になんて言うか知ってるかい?」
「部屋が暑いからだろ…。」
思考は途切れ、ベッキオはどうでもいい言葉を繰り返す。
フレイザーがぺろっと唇を舐めた。赤い舌がベッキオの下半身を痺れさせる。
「発情してるっていうんだよ。」
「人を犬みたいに言うなよ…。」
今やフレイザーとの距離は1メートルと離れてはいない。
フレイザーのハスキーな声が自分の理性を吹き飛ばす。
フレイザーがベッキオの手を取った。
自分の胸に当てる。
ベッキオは掌に、フレイザーの体温を生々しく感じ、その下の鼓動をはっきり捕らえた。
「お前の鼓動も早いじゃねえか。」
フレイザーの唇は、ベッキオの唇に触れ合うほどに接近している。
フレイザーの息を感じる。
そのままフレイザーはベッキオの口の中に吹き込むように囁いた。
「僕も発情しているんだ。君と…一緒に…。」
そのまま唇を重ねる。
もう、何も考えることはできなかった。
激しく唇を合わせ、本能に全てを委ねてしまう。
両手をフレイザーの背中に回し、彼の体を抱きしめる。
がっちりとして、しかししなやかなフレイザーの体が、かすかに震えていた。
「ベニー…。俺のMountie…。」
キスの合間にベッキオが呟いた。
フレイザーは、情熱的に唇を開いて、ベッキオの舌を受け入れる。
熱いフレイザーの吐息を感じ、ベッキオは何度も角度を変えながら、フレイザーの唇を味わいつくして、
ようやく離れた。フレイザーの顔を覗き込む。節目がちだったフレイザーが、ゆっくりとベッキオの瞳を覗き込む。
にっこりベッキオが微笑んだ。
「俺はここへ来て、よかったんだな…。」
フレイザーが頷いた。
そのままベッドに肘をついて、ゆっくりとベッキオを誘うように横たわる。
ベッキオは荒々しくシャツを脱ぎ捨てた。
フレイザーは情熱を込めた瞳でじっとベッキオを見つめる。
無駄のないしなやかなベッキオの動きにフレイザーは見入った。
それだけで、ベッキオの体は火がついたように熱くなる。
ベッドに膝をついて、フレイザーの頬を撫でる。
そしてシャツのボタンに手をかけた。ひとつひとつ、ゆっくりと外してゆく。
全て外してしまい、いきなりはだけた。真っ白なフレイザーの胸があわらになる。
唇を軽くあわせ、そのまま首筋から、フレイザーの肌にそって唇でなぞる。
両手はマッサージするように、ぴったりとフレイザーの胸を撫でてゆく。
脇から、胸へ、そのまま腰にまわし、ジーンズのボタンを外した。
広げられたウエストに手を差し入れる。
少し身を起こし、ベッキオはいきなりフレイザーのジーンズを下着ごと引き下げた。
生まれたままのフレイザーの姿に感嘆のため息をもらす。
もどかしく、自分自身を覆っていた余分なものを全て脱ぎ捨ててしまう。
二人を隔てるものはなにもなくなった。
ベッキオはゆっくりとフレイザーの上に覆いかぶさった。
二人の体がぴったりと合わさる。
お互いの昂ぶりが擦れ合い、そこからじんじんと疼きが湧き上がり、全身に広がった。
フレイザーが呻いて、微かに動いた。
それがきっかけだった。
ベッキオはフレイザーの白い滑らかな肌に唇を這わせた。耳朶を甘く噛み、息を吹きかける。
そのままあごを伝い、首筋を舐め、フレイザーの胸へと舌でたどる。
期待に震えているフレイザーの胸の突起を舌でトリルする。
フレイザーの体が跳ねた。
そのまま唇で吸い上げ、歯で挟む。フレイザーが喘いだ。
ベッキオの頭を抑え、フレイザーはそこから湧き上がる快感に耐えていた。
その間にも、ベッキオの手は休む間もなく、フレイザーの体を愛撫し、高めてゆく。
もうひとつの突起をつまんでやり、掌で押し付けるように撫でる。
そのまま興奮に上下する腹部を指先でたどり、臍を撫で、やがて熱い茂みに指を差し込む。
指先が既に充分勃ち上がった昂ぶりに当たる。ふと顔をあげ、ベッキオはそれを見た。
フレイザーの上気した顔に目を移し、ゆっくりとそれを片手で握ってやる。
フレイザーが大きく仰け反った。
掌の中のフレイザーは、熱く脈打っている。ベッキオは上下にそれを扱いてやった。
フレイザーの腰が快感に泳いだ。
胸の突起をまだしつこく味わっていたベッキオがゆっくりと舌を下ろしてゆく。
ようやくたどり着いた脈動するフレイザーの先端を舌先で舐める。
フレイザーが大きく喘いだ。
形に添って、舌を這わす。そして大きく唇を開いて、それを飲み込んだ。
「あぁ…レイ…。」
フレイザーが激しく喘いでいる。その声に煽られ、ベッキオは巧みにフレイザーを駆り立ててゆく。
きつく吸い上げ、喉の奥まで銜え込み、または舌で感じる部分を刺激してやる。
フレイザーの腰が揺れる。
どくどくとベッキオの口の中で脈打つフレイザーが限界を向かえようとしていた。
ふいにベッキオがそれから離れた。
高められたまま放り出され、フレイザーは切なげにため息を漏らす。
「まだだ、ベニー。」
荒い息をつきながら、フレイザーが潤んだ瞳を瞠る。
ベッキオが体を起こし、フレイザーの唇を指でなぞった。
フレイザーがそれを咥える。
充分にフレイザーの唾液で濡らされると、ベッキオは再び体を下ろした。
白い、血管の浮いた内腿を撫で、いきなり大きく足を広げさせる。
その間に体を落ち着かせると、フレイザーの唾液によって濡らされた指をつっと押し当てた。
フレイザーのそこは、興奮によってひくつき、誘っていた。
指でその周りを撫でながら、ゆっくりとその中へ進入してゆく。
フレイザーの体がまた大きく跳ねた。
ベッキオは自分の肩にフレイザーの両足を抱えあげるようにして乗せると、フレイザーのそこに神経を集中させた。
フレイザーの反応を見ながら、ゆっくり指を入れてゆく。
彼の体内は、肌よりずっと熱く、やわらかかった。
ねっとりと蠢きながらベッキオの指に絡み付いてくる内壁に、ベッキオは夢中になる。
放り出されたままのフレイザーの先端に軽くキスすると、舌先で舐める。
フレイザーの中の指は、いつの間にか増やされていた。
ずっと何かを探っていたベッキオの指がこりっとしたあるポイントにたどり着く。
その瞬間、フレイザーの体が大きく跳ねた。
ベッキオはその反応を楽しむようにそこを何度も指で押し上げてやる。
フレイザーの昂ぶりから、先走りが零れ落ちる。
それは、目の前が真っ白になるような快感だった。
何度も襲ってくる激しい疼きに、じっとしていられなくて、フレイザーは両膝でベッキオの頭をきつく抱え込んでいた。
苛立たしげに頭を振って、フレイザーの膝から逃れ、ベッキオはゆっくりと自らの昂ぶりをそこへ押し当てた。
指よりも容量の大きいものをいきなり打ち込まれ、フレイザーが大きく仰け反る。
逃げようと引かれるフレイザーの腰を、ベッキオはぐっと抱き戻した。
やがて、ぐっと深くフレイザーの内部へと収まる。
そこはどくどくと脈打ち、ベッキオのものを締め付けてくる。
ベッキオが唸った。
荒い二人の息遣いだけが、暗い部屋に響いていた。
フレイザーがうっすらと目を開いてベッキオを見た。二人の視線が絡み合う。
「ベニー…動くぞ。」
フレイザーが震えながら小さく頷いた。
ベッキオがゆっくりと腰を使い始める。
それは段々と早く、激しくなってゆく。
内壁を捲られるような痛みの中から、熱い快感が生まれ、フレイザーの体が悶える。
両足でベッキオの背中を締め付けながら、フレイザーはしっかりとベッキオにしがみついていた。
大きな喘ぎの合間に、フレイザーはベッキオの名前を何度も呼んだ。
ベッキオの腹に当たる、フレイザーの昂ぶりから、先走りが零れ落ち、そのままフレイザーの胸を濡らした。
ベッキオは手を伸ばして、それを同じリズムで扱いてやりながら、やがて二人は絶頂を向かえ、
フレイザーの中にベッキオが熱い奔流を放った。
そして、フレイザーも同時に激しく弾け、果てた。
汗と体液で濡れた体をあわせ、じっとお互いの体温を感じ、抱き合った。
やがて、ベッキオが体を起こした。
「ベニー、大丈夫か…。悪かったよ。初めてだったんだろ?」
「平気だよ。レイ。素敵だった。」
「ほんとに?」
体の下のフレイザーは、天使の微笑みを浮かべ、瞳を輝かせてベッキオを見つめている。
「ごめん…実は初めてじゃ、ないんだ。」
「あん?」
その言葉に驚いたベッキオが、フレイザーから離れた。
「ちょっと、ちょっと待て!ベニー。初めてじゃないってそれじゃ、お前、まさか…。」
ベッキオの慌てぶりにフレイザーも身を起こす。
くすっと笑う。
「ベニー!笑い事か?お前、それじゃ、男と経験があるってことか?」
「ごめん、冗談だよ。本気にするとは思わなかった。」
ベッキオの全身から力が抜けた。
どっとベッドに倒れこむ。
「レイ、大丈夫?」
「冗談になってないぜ!ベニー。あぁ、一気に年とった気分だ…、心臓が止まるかと思った。」
フレイザーがそっとベッキオの額に口付けた。
「君だけだよ。本当に…。」
ベッキオが体を回して仰向けになる。
腕を伸ばし、自分を見下ろしているフレイザーのこげ茶の髪に指を絡ませる。
「お前の冗談は冗談に聞こえないから、いやなんだ。」
そのまま腕に力を入れて、自分の胸に引き寄せた。
フレイザーはされるまま、ベッキオの胸に頬をすりつける。
「君だけだよ。レイ。愛してる…。」
ベッキオは黙って、フレイザーを抱きしめた。
窓の外では、止んでいた雪が、また降り出していた。
そして静かに世界を真っ白に変えた。
終わり