- Title: Proper Martini (The Night Is Young)
- Language: Japanese
- Rating: R18 (slash)
- Pairing: Harry/ Eggsy (Kingsman)
- a disclaimer: It's only slash.
- Summary: The night the pair spent together. Once and for all.
「ハリー、どうしてキス以上はしてくれないの」
何杯目かのマティーニでとろりと目が据わったエグジーに問われ、ハリーは己の軽率を後悔した。
数週間前のこと、厳しい訓練の一日の後、施設の庭の芝生でJBと戯れるエグジーが自分を見つけて駆け寄ってきた時、まさに魔が差したとしか言いようがない。いっとき緊張が解かれた無防備な笑顔、若く真剣な汗のにおい、芝の青臭さ。脳天をやられたようにくらりとしたハリーは、気づいたら外壁の死角にエグジーをはりつけて唇を奪っていた。一瞬慌てふためいたエグジーだったが、数秒後には情熱的にキスに応え、せつなげな息を吐きながらハリーを上目遣いに見た。
「ハリー・・・?」
「若さを称える儀式だ、プラトンを読め」
混乱したエグジーをさらに煙に巻くようにハリーは言った。
「行きなさい」
「・・・イエス、ハリー」
納得がいかない表情のまま、ここがどこかを心得ているエグジーはJBにリードをつないで建物の中に消えていった。その後、何度ふたりきりになっても普段と変わらないハリーの態度にエグジーは、これも何かの訓練あるいはテストの一環だろうと自分に言い聞かせてすごしてきた。
しかしセレクションの最終日、初めてハリーの家に招き入れられたエグジーは、あの時の期待と混乱が、抑えても抑えきれぬくらい膨らんでいることを知った。セレクションに落ちれば二度とハリーに会うことはなくなるのだろう。自分がランスロットに選ばれれば、明日をも知れぬ使命の日々が始まるのだろう。もう今夜しかないことはわかっていた。
「ハリー、どうしてキス以上はしてくれないの」
ついにその質問を発してしまったとき、エグジーはハリーの家の応接間の、アンティークのソファに沈み込むように座っていた。マントルピースに寄りかかっていたハリーがゆっくりと近づいてくるのを、激しくなる動悸とともにじっと見ていたけれど、酒のせいか緊張のせいか、うまく焦点が合わなかった。
「エグジー」
一瞬のうちにエグジーの右手にあった空のグラスがそっと手から外され、代わりにハリーの大きな手がエグジーの指をからめとっていた。
「キス以上をして欲しいのか?わたしに?」
指のあいだに指が絡み、エグジーはそれだけで力を込めて握り返してしまう。イエス、ハリー。答えているようなものだ。
「エグジー、返事は?」
耳もとに寄せられた唇から、ささやくような声が吹き込まれて体中が粟立つ。
「イ、イエス・・・ハリィ・・・」
この人には何一つ嘘がつけない。大人を誤魔化すことには自信があったのに、それが通用しないのは初めてだった。父親とはこういうものなのかと、父親を知らぬエグジーは思った時もあったけれど、父親代わりでは説明できない、甘くて痛い思いは募るばかりだった。
「では、ベッドに行こう」
言いながらハリーの心のなかで警鐘が鳴り響く。いつもアーサーに言われるように、自制心と常識を守る力が足りない自覚はあるのだ。
エグジーが言われるがままに立ち上がろうとする前に、ハリーはワイシャツの下に隠された鍛え上げられた筋力でエグジーを抱き上げた。まるでハリウッド俳優がヒロイン役の女優を抱き上げるように。
高級ホテルのように、一分の隙もなく整えられたダブルベッドの真っ白なシーツの上に、エグジーは投げ出された。ハリーがエグジーのスニーカーを手ずから脱がせようとする前に、エグジーはなんとか流れを断ち切って質問を挟み込む。
「あの、ハリー、俺、男だけど」
「そんなことは、最初にきみに会う前から知っている」
礼儀作法にうるさいわりには、ハリーの作る世界のなかで、誰かが決めた常識などは取るに足らないものだということはエグジーも肌で感じていた。痛快じゃないか。もっとその中に飛び込んでみたいと思うのはたぶんそのせいだ。それでもまだ疑問は残る。
「それでハリーはさ・・・こんな俺と寝たいの?」
ベッドに組み敷かれてこんなことを言うなんてね。
「きみが望むなら」
ハリー独特の硬質な声が即答で帰ってくる。敵わないと思うほどに反発したくなるのがエグジーの性格であった。
「ハリーずるいよ」
所在を失ったような非難の声にハリーは口元が緩むのを自覚した。つい笑みが浮かんでしまう。
「…任務でハニートラップを使う時にはそう言え。でも紳士は本来、責任を相手に押し付けることなどしない」
「は?」
二転三転するハリーの言葉を理解しようともの問いたげなエグジーに、ハリーはこれが本心だと伝えるようにまっすぐに目を見て囁いた。
「きみは魅力的だ」
そう言いながら、ハリーの指がエグジーの半開きになった唇をなぞる。エグジーは何も考えられなくなり、ハリーの指に軽く歯を立ててから吸い付くようにして舐めた。それを合図に指はエグジーの口の中を攻めたてるように這いまわった。これだけでエグジーの頭の中は不埒な妄想で一杯になり、よだれが垂れそうになって我に返る。まだキスもされてないのに。
ハリーはすでに蕩けたようなエグジーの表情に満足して、エグジーを抱き起して口づけた。焦らされて性急になったエグジーの舌が積極的に絡みついてくる。すっかり息が上がって、ドレスシャツにしがみつくエグジーの唇を解放すると、エグジーの手がまだきちんと締められたままのハリーのネクタイにかかった。素肌を求められて、ハリーも昂ぶらずにはいられなかった。もどかしげなエグジーの手をそっと外し、みずから結び目を緩めるとすっとネクタイを引き抜いた。
ふと、このままネクタイでエグジーの手首を縛って、思うままにしたいという欲求に駆られたが、最初の夜からそのような趣向はフェアでないかもしれない。それに理屈は抜きにして、エグジーの若く熱い手を身体に感じたい方が強かった。
エグジーはその様子を固唾を飲んで見守り、シャツのボタンに手を伸ばした。
「外してもいい?」
「構わない」
許可を告げる自分の声がうわずっているのをハリーは自覚した。エグジーの指が少し震えながらシャツのボタンをはずし、張りのある上質な布とハリーの肌との間に手のひらが滑り込む。シャツが肩から落ちるのと同時に、ハリーはエグジーのフレッドペリーを一瞬にして脱がせ、肌と肌とを重ねた。
「ハリー・・・ッ」
エグジーは吐息まじりにハリーを呼ぶ。ハリーの重みがエグジーの身体を真っ白なシーツに沈めた。
ハリーの指がエグジーの若くも精悍な身体のラインをたどり、唇と舌がエグジーの白い肌を味わう。白くきめ細かな肌にところどころ刻まれた傷跡が過酷なストリートの少年時代を物語る。エグジーの生きてきたままに惹かれるこころと、彼を導いて生きる世界を変えてやりたいという願いがハリーの胸を苦しくした。
「ハリー・・・マティーニになんか盛った?俺、なんかおかしいよ」
美しい頬を上気させて、せつなげな吐息とともにエグジーは問いかけた。ハリーに触れられたところのすべてが敏感になっていて、下半身に血流が集まってくるのがわかる。
「きみが飲んだのはジンとベルモットだけだよ。そんなに好いかね?」
ハリーが少し微笑みながら答えたのを見て、エグジーは恥ずかしさに隠れてしまいたくなる。媚薬を盛られたように感じていることを明かしてしまったのだから。もちろん、ハリーはそれを見逃さず、エグジーの若者らしくゆるいシルエットのパンツを簡単に脱がしてしまった。グレーのボクサーブリーフの中心はすでに存在を主張して、ハリーの指が布ごしに刺激するとすぐに染みをつくるほどだった。
「恥ずかしがることはない。わたしとしては、嬉しいだけだ」
ハリーは身体を起こしてエグジーを後ろから抱き込んで、回した手でエグジー自身に触れた。まるで自慰を手伝われているような体勢にエグジーは顔まで赤くなるのを感じながら、的確な指遣いに身を任せるしかなかった。気がつけば時にハリーの指は後ろ側に回り、エグジーはつい声を上げてしまう。
「あ、ハリー、そんな」
「嫌じゃないだろう、きみの身体は正直だから手に取るようにわかるよ」
「ああっ!でも、でも…っ」
とうとう指を中に入れられて、エグジーは身を固くした。しかし異物感の後からやってくる快感に身体はますます熱くなり、ハリーの左手に委ねられた昂ぶりも痛いほど張り詰めてゆくのがわかった。
「ハリー、ハリー…もう、俺…!」
たまらず反らした頭をハリーの胸に擦り付けて、エグジーはハリーの手の中に若い精を放った。
エグジーが身体を震わせながら呼吸を整える間、ハリーはエグジーの髪を梳きながら事もなげにエグジーのものの付いた指を舐めとった。 それから、腕の中で脱力した若い肢体を愛でるように眺めながら声をかけた。
「今夜はこれで終わりにしてもいいが?」
絶頂を迎えた直後だというのに、後ろまで触れられたせいかエグジーの身体はまだ疼きが残り、その先を求めていた。
「そんなこと言わないで」
エグジーはハリーの顔を見上げて言った。思うよりも懇願口調になり、表情もハリーを煽るばかりだった。
「それではフルコースで頂こう。覚悟はできているね?」
「イエス、ハリー」
エグジーはやっと力が入るようになってきた身体を起こした。
「あのさ、こんなことを言うのは紳士的じゃないかもしれないんだけど」
エグジーは熱っぽい視線を、まだスラックスを穿いたままのハリーの下半身に送る。
「ハリーも・・・脱いだらどうかな」
ハリーがスラックスを床に蹴り落とすと、あらわになった長い脚にはエグジーの見たことのない装身具がついていた。ちょうどストリップクラブのダンサーたちが見せつけるガーターベルトのような細いベルトが膝下に巻かれ、なめらかな絹の黒靴下を吊り下げている。紳士ってやつはよくわかんねえ趣味してんだな、と突っ込みを入れようとしても、その倒錯的ななまめかしさにクラクラするばかりだった。
エグジーはするりと身体を起こして、ハリーを上目遣いに見上げた。
「ハリー、俺さ・・・うまいんだよ?やってあげようか?」
エグジーは誘われるように、ハリーの脚に下から手を這わせた。この靴下のままでやりたい。
「エグジー、きみが望まぬ方法で小銭を稼いだことがあるとしても、それを思い出す必要はない」
「あばずれ扱いすんなよ」
街角に立って身体を売るなんてことまでは手を出したことがなかったけれど、パブのトイレで物欲しそうなおっさんを抜いてやって稼いだことならなくはない。「プリティ・ウーマン」のジュリア・ロバーツだってコールガールだったんだろ、とエグジーは開き直る。せめて少しだけ手管を知っていることで大胆になれる気がした。
エグジーは触れる前から勃ち上がっているハリーのものに手を添え、「すげえな」とつぶやきながら舐め上げた。ハリーの身体が反応するのが分かって勇気づけられ、エグジーは思い切って口の中に含んだ。いつしかハリーの手が頭の後ろに回り、喉の奥に触れて涙が浮かぶほどに押し付けられるのが無性にうれしかった。ハリーの飲ませて、と自分でも驚くような卑猥な台詞を口走りそうになったとき、不意に離されて身体ごと引き上げられ、深くキスされた。
上気した顔に涙目、唇をキスの余韻で赤く濡らしたエグジーの表情が、あの日施設の庭で白昼堂々唇を奪った時と同じ衝動をハリーのうちに呼び覚ます。
「きみは体操が得意だから」
ハリーはエグジーの両脚を高く抱え上げた。ハリーの言葉通りエグジーのしなやかな肢体は無理もなくしなる。そしてその体勢のままハリーはゆっくりとしかし容赦なく、自らをエグジーの身体に穿っていった。
「ああっ・・!ああっ・・・!くそっ・・!」
初めての痛みにエグジーの口から叫びにも似た声が漏れる。
ハリーは眉根を寄せて耐えるエグジーの耳元に唇を寄せて囁いた。
「エグジー、最後まできみを気遣うつもりだったのだが、自信がなくなってきた」
ハリーはエグジーの身体をさらに折り曲げるようにして深く突き上げた。
「ああっ!ハリー!!」
繋がっている部分が痛いというより熱く、その熱さが身体中に広がってゆくようだった。
じわじわと汗ばむ肌がハリーの肌と密着する。ハリーにもこの焦燥が伝わっているだろうか?
もの言いたげな息遣いは的確に読み取られる。
「・・・エグジー、痛いか?」
「痛いけど、ハリー、構わないからもっと動いて!」
かすれた声で懇願するようなエグジーの言葉に、ハリーは彼にすべてを与えてやりたいと心から思った。
そして愛おしさと本能に任せてエグジーの身体の奥深くを求めた。ついにはエグジーが二度目の絶頂を迎えて蕩けたような表情で力を抜くまで、エグジーを見つめ続けた。
「ハリー・・・すげえ、最高だったよ・・・」
エグジーは虚脱した身体のなかにまだ甘い疼きが残るのを感じて、ハリーにすり寄るように身を寄せた。ハリーの腕がいとおしげにエグジーの身体にまわり、エグジーは少しリラックスして聞いてみる。
「ハリーもなんていうかさ・・・ボンドみたいなの?セックスに関してだけど」
悪戯っぽい問いかけにハリーは困り顔で答える。
「任務に必要とあればな。プライベートでは違う」
「愛する人としかやらない?」
ハリーは穏やかだが真剣な目でエグジーを見た。
「じゃあ愛されてんだ、おれ?」
「間違いなくな。しかし愛は互いに対する信頼と責任だよ。きみもキングスマンになれば、それを実感するだろう」
「なれるかな、俺」
エグジーの頭の中では、ハリーに信頼されて一緒に任務に赴く自分の姿が浮かんでは消える。
「まだ試験が残っている、もう寝なさい」
自分の皮算用を恥じてエグジーは口を閉じた。喋るのをやめると、急激に身体が重くなって眠気が襲ってきて、そのまま深く眠った。翌朝トーストが焼ける匂いで目を覚ますまで。
End