「夜明け」第一話

Jul 12, 2008 20:28


For anyone who can read and understand Japanese...here's something I wrote for a writing competition.

公募ガイドで見つけたコンクール。テーマは「世界が終わる夜に」
正直、日本語で書くのはキツイ。 しかも家族には日本語の使い方とか書き方がおかしいとかって言われたし。。。~_~
まぁ、それでも、書いてて面白かったし、以前日本語で書こうとした時よりはマシな結果が出たと思う。

誰か読んでくれるのなら、ぜひ感想を聞かせて下さい!!

それでは。。。

夜明け

第一話

彼と出会ったのは、真夏の息苦しい程の暑さが過ぎ、肌に触れる空気が少し涼しく感じるようになった秋の始まりだった。開けた覚えのない窓から静に吹き込む夜風。誰もいないはずの部屋に人の気配。背後から見つめられて鳥肌が立つような感覚。イヤな予感が頭をよぎった。

「誰かいるの?」

質問に答えるのは外から聞こえる微かな車の騒音と近所の犬の鳴き声だけ。私は机を離れて、窓を閉めた。街灯で照らされている道路には人影一つなかった。

「この問題‐」

他人の声が後ろからしたとたんに驚いて飛び上がったあげく、悲鳴まで上げてしまった。心臓が胸から飛び出るぐらいバクバクしながら、突然机の前に現れた青年を見せる自分の目を疑う事しかできなかった。

茶髪で、鋭い黒い瞳、はっきりとした顔付きは何処か西欧の血筋を引く雰囲気がした。服装も今の日本の流行物ではなく、少し大人っぽくて落ち着いたスマートキャジュアル。

「‐答え間違ってる」

いやっ、宿題の問題なんてどうでもいいよ。それより、誰?どうやって、いつの間に入って来たの?何の用?!百をも超える質問が浮かんで来たのに、口から溢れ出た言葉は:

「前に、どこかで会った事ありませんか?」

不思議な気持ちだった。見知らぬ人なのに、まるで忘れた夢を思い出すかのような懐かしい感じがした。だけどその気持ちはたった一瞬の物で、彼と目が合ったとたん消えた。

彼はすぐには答えず、暫く無表情で私を見つめてから「ない」と言った。

もったいぶったわりには腹が立つ程単純な返事に私はつかの間の冷静を失った。

「では、あなたは何方ですか?勝手に入って来て、警察 ‐」

「10時間」

「‐呼びますよ!」

「お前はあと10時間で死ぬ」

何かを言おうと思って口を半分開けたのに、彼の言葉の意味を認識したとたん声が嗄れた。死ぬ?10時間で、私が?

思わず笑ってしまった。心の奥底に潜む不安と恐怖を無理やり隠すかのように大きな声で、不自然な程長く笑っていた。

「あなた、誰ですか?どうやって入って来たかは知りませんが、そんな趣味の悪い冗談を言いに来たのなら、出て行って下さい。悪戯に付き合う程ひまじゃないんです」

敬語を使うのがやっとの事で、気付けば彼を激しく睨んでいた。しかし彼はただ厭きれた目をして溜め息を吐いた。

「やっぱり素直に受け入れてはくれないか」と彼は呟き、椅子に座って腕を組んだ。

「いい加減にして‐!」

「あぁ、うるさい、ちょっとは落ち着いてくれよ。俺だって好きでこんな事してるんじゃないんだからな」

「落ち着く?!よく言うよ、無断で人の家に入り込んで、犯罪だよ、犯罪!その上、人の死を予言するような悪戯なんかして。命を何だと思ってるの?」

「別に何とも思ってない。だって俺、もう死んでるから」

笑う気にもならなかった。

「はいはい、信じてないね、顔に書いてある。まずは証拠か?」と言った瞬間、彼は消えた。瞬く暇もなかった。そして驚きが表情に変わる前に彼は再び姿を現せた。今度は鼻と鼻が触れる程近くに。反射的に一歩下がろうとした私の手首を彼は掴んで持ち上げた。

「いいか、これが何よりの証拠だ。良く見てろ。俺が気を緩めると。。。」

私の腕がストンと落ちた。そしてふと見ると、彼の手も全身も薄く霞んで見えた。

「うそ。。。」

「じゃないよ。ほら」半透明の手を私の肩に翳し(かざ)、互いの皮膚が当たるはずの瞬間、彼の指は肩を通り抜けた。ホラー小説で読んだみたいに寒気がしたり、ゾッとする感じは一切なかった。物理的不可能な映像を見せられた赤ちゃんのように、私はただ黙ってジィとその手を見ていた。

「少しは信じてくれたか?俺は生きていない。心臓も動いてないし、体温もない。この姿はお前に会って話す為だけにある‘うつわ’のような物なんだ」

そう説明している間に彼は手を引き、ゆっくり又実体化して行った。動揺は思った程激しくなかった。驚きやパニックの時点をもう越えていたのかもしれない。そして残った物と言えば、少し躊躇いのある好奇心。

「どうゆう事?」

この現状を否定しないのが嬉しかったのか、彼は少しホッとした顔をして、話し始めた。

「この世は全て陰と陽の関係で作られている。‘陰’がなければ‘陽’も存在できない。例えば、光と影。光がなければ影もないだろ?人間も同じような縁で結ばれている」

「‘運命の人’ってやつ?」正直、あまりそうゆう事は信じていなかった。

「違う。恋愛とは関係ない。人の魂というのは人間の体に宿るにはあまりにも巨大すぎる。だから陰と陽に分け、その分裂した魂を受けるのが二人の人間。歳や性別や人種も何も関係ない。二人の共通点はただ一つ。陰がなくなれば陽は存在しない」

「魂の片方が死ねば、もう片方も生きてはいられないという事?」

「ご名答」

あぁ、やっと分かったような気がした。「そしてあなたが私と同じ魂の半分を持つ人なの?」

「そう、俺が陰、お前が陽。だけど俺は死んだ」

「だから私も、死ぬ?」

返事を言葉にしない彼の答えは何よりもはっきりとしていた。私は迷っていた。本来なら信じるはずのないこのばかげた話だけど、「真実だよ」と言う小さな声が頭の奥で囁いていた。

‘死’なんて今まで具体的に考えた事がなかった。明日も来週も来月も来年も再来年もずっと平凡に生きて行くと漠然と思っていた。なのにいきなり残り10時間の命だと言われて、世界を見る目が変わってしまった気がした。明日の朝には又太陽が空を昇り、夜には西に沈む。世界は、時間は流れて行く。いつもの様に、これからもずっと。

だけど、そこに私は居ない。

私の世界はこの夜が明ける頃に終わってしまう。

「そんな。。。」声が震えていた。「そんなのおかしいよ!誰にそんなのを決める権利があるの?第一、なぜそんな事を態々教えに来たの?」

「決めるのはこの世を支配する者達。そして死の予言を伝えるのはその支配者共の汚れた娯楽の為だ。

「年を取る人は人生を長年歩んでいる内に自然と死と向き合う事が出来る。仕事を引退し、社会から離れ、肉体的や精神的機能を段々失い、自分の存在が消える恐怖や、何らかの方法で自分が確かに生きていたという証明を残す事を考える時間がある。だけど18歳のお前や、20代、30代の人に急に死の予言をしたらどう反応する?最後に何を願う、何を望む?支配者共はその予測できない行動を見て楽しんでいるだけだ」

彼は怒っていた。苦やしかったのか、彼の言う‘支配者達’が憎かったのかは、その時、私にはまだ分からなかった。でも彼が怒りに満ちていたからだろうか、私は逆に悲しさを感じた。それも又、当時の自分には理解できなった感情。

そして何かに諦めがついたかの様に私は小さく溜息を吐いた。

「夜明けまでの命かぁ。ホント、何すればいいのかな?」もはや宿題や大学受験、部屋にいる赤の他人すら意味のある問題ではなかった。

「祈れ」

「え?」

「死に行く者への情けらしい。支配者はお前に祈れと言っている」

「それって、願いを3つ叶えてくれるってやつ?」

「いや、祈りと願いとは違う。お前に許されるのは10個のお祈り。その意味を理解し、支配者共の気が向けば、叶えてやらんでもないとさ」

あれ?何かがさっきと違う?彼は私から目を背けはしなかったが、微妙に変わる顔の線や表情はまるで。。。

「ねぇ、誰と話しているの?」
 
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