Salvation Ch. 7 >1

Dec 19, 2006 02:57



『Salvation ――救済―― 』 の翻訳を更新しました。Here is the new part of the translation of Salvation.
スラッシーな内容に、ご注意ください。Please be warned of slashy contents.

Author: Isis様 (isiscolo)
Rating: 時々18禁 (Occasionally NC-17)
Pairing: Snape x Draco (途中リバあり)
Previous: これまでのお話
Summary: あらすじ

===

このスラッシュの翻訳は、原作者のIsis様 (isiscolo) のご許可をいただいて掲載しております。
原作はこちら: http://hieroglyfics.net/hp/salvation.htm

===

[ << ] [ Main ] [ >> ]

目を開けたときの頭痛は相変わらずひどかったが、ドラコはここ何日か忘れていたような爽やかな気分で目覚めた。ああ、素敵な夢だった。クィディッチ場を縦横無尽に飛びまわり、スニッチを掠めとって地上に降り立ち、同寮生から喝采を浴びる夢。変身術でマクゴナガル教授に百点満点をもらう夢。母が微笑みかけながら、優しく額の髪を掻きあげてくれる夢。そして、目覚める直前には……セブルスの夢を見た。

夢のなかで二人は、セブルスの大きな寝台に横たわっていた。裸の脚は裸の脚に絡まり、腕は互いの身体に巻きつけられている。セブルスの黒髪が肌を擽(くすぐ)り、唇が耳元で囁く。「愛している。信じて欲しい。愛している。分かって欲しい」力強くも繊細なセブルスの指が顎のしたに当てられ、ドラコはあの黒い瞳の深みを見あげていた。「愛している。分かって欲しい、信じて欲しい。強くありなさい、愛しい人よ」

道理で夢なわけだ。ドラコは溜め息交じりに薄く微笑み、日の光を避けるように目を閉じたまま、自分の寝台で伸びをする。もしそんな言葉を実際に口にしたならば、セブルスはその場で石になってしまうだろう。それでも――夢だと分かっていても――心の底が温かくなるのを止められない。セブルス本人がここにいたら、どんなにか良いだろう。そうしたら、この朝勃ちの使い出もあるのに。

ドラコは寝台から脚を投げだすようにして床に下り立ち、いつもの吐き気に襲われ立ち竦む。昨日ほどひどくはなかったが、吐き気とともに昨晩の記憶が押し寄せ、心地良い夢を掃き去った。少年を殺したのだ、今回は。父の――冷血で非道で、自分を使嗾(しそう)し、操り、恋人との仲を引き裂いた、父の――命令に従い、幼い命を殺めたのだ。

だが待てよ。自分を操っていたのは、セブルスではなかったのか。父の恋人だった男。裏切った恋人への復讐のためだけに、失われた過去を取り戻すことに躍起になっている男。

『愛している。分かって欲しい、信じて欲しい』

夢は何と残酷なことか。

『己の心に忠実であれ』

でも、セブルスが自分を利用しただけだとしたら――ドラコはシャワーの栓を捻りながら考える――なぜセブルスは、ドラコの精神的成長に拘っていたのだろう。どうして熟慮することを勧め、父親やその取り巻きの言うことではなく、自分の理想について真剣に思いを巡らすよう促したのだろう。セブルスは何一つ奪わなかった――与えてくれただけである。

ドラコは目を閉じ、温かい湯が肌を流れ落ちるに任せた。セブルスが長い指でなぞってくれた肌。目を瞑るだけで、あの指先を感じることができるほど、その記憶は鮮明である。石鹸を身体に塗りつけながら、ドラコの指はふと胸に下がっているネックレスに触れた。これは……!目を見開く。

どうして忘れたりしたのだろう。どうして疑ったりしたのだろう。身体を濯ぎシャワーから出るとドラコは、タオルを使いながら鏡のまえに立つ。蛇は、鎖骨のしたで静かに佇んでいた。「愛してくれてる」ドラコは呟く。「絶対に」

そして、父上は大嘘つきで、残酷で、人でなしだ。善くも人を、怪しげな黒魔術に誘いこみやがって。『黒魔術を使うたびに、少しずつ、魂を闇の世界へ捧げていくのだ』。

「ふざけるな」ドラコは声に出して呟く。

鏡のなかで、蛇の目が光った気がした。言葉に言い表せない力が身体に漲り、バタービールかコニャックのように、血管をふつふつと流れる。ドラコは背筋を伸ばした。そろそろ光の世界へ戻るときだ。

その晩、父が部屋に入ってきたとき、ドラコは迎え撃つ覚悟ができていた。黒いローブを身に付け、伏せ目がちに思う。僕は強い。僕は愛されている。父が口を開き、インペリアスが網のように降りかかってきた。一瞬、取り乱しそうになったが、即座に温かな力が遍身を流れ、網目の穴がはっきりと見えるようになる。人が一人潜り抜けるには充分な大きさの穴である。一歩踏みだすだけで自由になれるのだ。

ドラコは注意深く顔を整え、昨晩とそのまえの晩父に見せた、ほうけたような表情を保つ。父が怪訝そうに見つめてくる。父子間の精神的繋がりが薄いことに、感づいているのだろうか。しばしの躊躇ののち、父はドラコに杖を渡し、荷扱室へ向かって廊下を先に立った。

ドラコは大きく息を吸いこんで、網目の穴に狙いを定め、踏みだす。水のなかを歩むように穴を潜りぬけ、杖を伸ばして囁いた。「ステューピファイ」

ドラコは倒れた父の身体を踏み越え、振りかえりはしなかった。

「フォラス・グラディアムール」呪文を唱えると、荷扱室の扉が開く。自分の能力では遠すぎる、それは分かっていた。しかし、ほかにどんな方法があろうか。片手で銀細工の蛇を握り締め、目を閉じて集中し、ドラコはホグワーツの門外へアパレートした。

姿を現すや否や、痛みが身体を突き抜け、見張りの怪獣像のまえに倒れこむ。「ドラコ……マルフォイ……です」声を絞りだした直後、世界が暗転した。

[ << ] [ Main ] [ >> ]

===


translation, salvation, slash, hp

Previous post Next post
Up