Book 6 Ch. 24 Sectumsempra Translation

Jan 15, 2006 21:37



スラッシュ翻訳の為に立ち上げたジャーナルですが、少しばかりキャノンを…。
ドラコ&スネイプファンとしては外せないシーン、6巻のSectumsempraの場面を、私なりに訳してみました。
個人的な楽しみの為戯れに試みたものですので、松岡さん、静山社、その他関係者の権利を侵す意図は毛頭ありません。
第6巻のネタバレにご注意ください。

This journal was actually launched for slash translations, but here is some canon, the Sectumsempra scene, that I have translated into Japanese. Being a Draco and Snape fan, this is one of my favorite scenes in Book Six. It was done solely for the purpose of my personal pleasure, and I have absolutely no intention to infringe on any rights of Ms. Matsuoka, Sayzan-sha, or any other parties concerned.
Please be warned of HBP spoilers.

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ここのシーン、大好きです。
I was really fascinated with this scene.

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ハリーは静かにドアを押し開ける。

ドラコ・マルフォイが扉に背を向けて立っていた。両の手は洗面台の左右を掴み、プラチナ・ブロンドの頭は項垂(うなだ)れている。

「ね、やめて。」嘆きのマートルの優しい囁きが個室の方から聞こえた。「ね、やめて……どうしたのか教えて……そうしたら助けてあげられるわ……。」

「誰も助けられないよ。」マルフォイは全身を震わせて言う。「出来ないんだ……僕には出来ない……上手くいかないんだ…でも早くやらないと……僕を殺すって……。」

そしてハリーは、気付いた。余りの衝撃に、ハリーはその場に釘付けになったような錯覚に陥る。マルフォイは、泣いていた――何と彼は泣いていた――。涙が青白い頬を伝い、垢じみた洗面台に零れ落ちる。マルフォイは喘ぎ、嗚咽を漏らした。そして割れた鏡を見上げ、肩越しに自分を見詰めているハリーに気付き、激しく身震いをする。

マルフォイは振り向き様に杖を抜いた。反射的にハリーも自分の杖を構える。マルフォイの呪いは辛くも外れ、ハリーのすぐ横の壁に掛かっていたランプが、粉々に砕け散った。ハリーは横に飛び、『レビコーパス!』と考えながら杖を振る。が、マルフォイはこれを阻み、新たな呪いを仕掛けようと杖を振り上げた――

「駄目よ!駄目よ!やめて!」嘆きのマートルは悲鳴を上げ、その声はタイル張りの部屋に大きく木霊した。「やめて!や・め・て!」

ドカンと大きな音がして、ハリーの後ろの塵箱が爆発する。ハリーは足縛りの呪いを掛けようとしたが、これはマルフォイの耳の後ろで壁に撥ね返り、嘆きのマートルの下にあった貯水タンクを木っ端微塵に破壊した。マートルが大きな叫び声を上げる。そこら中に水が降り注ぎ、ハリーは足を滑らせ、マルフォイが顔を歪めて「クルシ――」と叫んだ。

「セクトゥムセンプラ!」とハリーは床から怒鳴り、杖を闇雲に振り回す。

鮮血が、マルフォイの顔から、胸から、迸った。まるで目に見えない剣で斬り付けられたかのように。彼は後ろによろけ、大きな飛沫を上げながら水浸しの床に崩れ落ちた。だらりと下がった右手から杖が落ちる。

「そんな――」とハリーは息を呑み込んだ。

滑りながら、よろけながら、ハリーは立ち上がり、マルフォイに駆け寄る。今やその顔は緋色に輝き、白い両の手は血の滴る胸を掻き毟っていた。

「そんな――そんなつもりは――」

自分が何を言っているのか分からなかった。ハリーはマルフォイの傍(かたわら)に崩れ落ち、跪く。マルフォイは自分の血の海で止めようもなく震えていた。嘆きのマートルが耳を劈くような叫び声を上げる。「人殺し!トイレで殺人!殺人よ!」

背後でドアが大きな音を立てて開き、見上げたハリーは恐怖に慄く。スネイプが駆け込んで来た。顔は怒りに青褪めている。ハリーを乱暴に脇へ押し遣ると、スネイプはマルフォイを覗き込むように跪き、取り出した杖で、ハリーの呪いが抉った深い傷の上を辿り、歌のようにも聞こえる呪文を唱えた。血潮は和らいだ。スネイプはマルフォイの顔の血痕を拭い、呪文を繰り返す。傷口は塞がったようだった。

ハリーは身動ぎもせず見詰めていた。自分がしたことに恐れ慄いて。自分も血と水でずぶ濡れだという自覚は殆どなかった。嘆きのマートルが頭上で啜り泣き、咽び泣き続けている。三度目の反対呪文を行った後、スネイプはマルフォイを抱え起こし、立たせた。

「医務室に行かねばなるまい。ある程度は傷痕が残るかもしれないが、すぐにハナハッカを飲めばそれも避けられるであろう……さあ……。」

スネイプはマルフォイを支えて部屋を横切ると、ドアの前で振り向き、冷たい怒りの篭った声で言う。「そして、ポッター……お前はここで私を待つように。」

言い付けに背こうなどという考えは一瞬たりとも起こらなかった。ハリーは震えながらおもむろに立ち上がり、水浸しの床を見下ろす。血痕が、深紅の花のように水面を漂っていた。嘆きのマートルに静かにしろと言う気さえ起きない。マートルは啜り泣き、咽び泣き続けながら、明らかに自分に酔い始めている。

スネイプは十分後に戻ってきた。洗面所に足を踏み入れ、後ろ手にドアを閉める。

「行け。」と彼はマートルに命じ、マートルはすぐに自分のトイレに飛び込んだ。あとには、静寂が鳴り響いていた。

「そんなつもりじゃなかったんです。」ハリーは即座に言った。その声は、冷たく湿った空間に木霊する。「どんな呪文なのか、知らなかったんです。」

しかしスネイプはこれを無視した。「どうやら私はお前を過小評価していたようだな、ポッター。」と彼は静かに言う。「お前があれ程の闇の魔術を知っているなどと、誰が思っただろう?あの呪文は誰に教わった?」

「どこかで――どこかで、読んだんです。」

「どこで?」

「図書館の――本です。」ハリーはでっち上げる。「何ていう本か思い出せ――」

「嘘吐きめ。」とスネイプは言った。ハリーの喉はからからに渇く。スネイプが何をするか、ハリーには分かっていた。そして彼はそれを阻止出来た例(ためし)がなかった……。

目の前の洗面所が揺らめく。ハリーは頭を空っぽにしようと足掻いた。しかしどんなに努力しても、混血のプリンスの『上級魔法薬学』の教科書がぼんやりと意識の前面に浮かんでくる。

そしてハリーは再び、倒壊した水浸しの洗面所の真ん中で、スネイプを見詰めていた。その黒い瞳を覗き込みながら、恐れていることをスネイプが見なかったという見込みのない望みにしがみ付く。しかし――

「学生鞄を持ってきなさい。」とスネイプは静かに言った。「そして全ての教科書を。全部だ。ここに持ってきなさい。今すぐ!」

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A/N:

白い(多分)タイル張りのトイレと、鮮血の赤の、対比の美しさに息を呑みました。
初めて読んだ時は、児童書にこんな耽美的(という表現が適切かどうか分かりませんが)なシーンがあっていいんだろうか。英語力のなさ故に、私が意味を取り違えてるんじゃなかろうかと、思わず二度読み返してしまいました。

Reading this passage, I was struck with the depicted beauty: the contrast between the (assumability) white of the bathroom tiles and the red of blood. When I first read it, I was stunned to find as aesthetic, almost sensuous, a scene as this in a children’s book and suspected I must have misread it somehow due to my poor English ability and found myself rereading the passage twice.

Lala

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translation, book_6, canon, hp

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