A CASE OF THE STUBBORNS ― Pied Piper 妄想 ―

Apr 01, 2009 23:14


dS unknown 自体が既に網走級番外なのでは?という疑問はさて置き。
というか、今回は次々どんどん置いていくので、そこんとこ夜露死苦☆


かって作中でレイちゃんを殺した私ですが、一人殺せば二人も同じ、殺しは殺しを呼ぶ。
というわけで、ベニーが先に死ぬバージョンも一応考えたんです。
おもに『Fifty Years' Wonder』執筆中の息抜きに。(……)
そっちは『Fifty~』とは違い、3人称で、フレイザーの死後、レイが山も谷もある、ごく普通の人生を送るというものでした。

不惑を目前に二十歳前の若妻を貰い、順調に子どもが出来るけれど、身重の彼女が交通事故にあって死産。
離婚の危機に陥るも乗り越えて、その後、一人娘に恵まれる。仕事のほうも途中で管理職になったりそれなり。
娘が大学に入ってほっとした途端に、35歳の大学助手と結婚すると言い出して一騒動。親戚友人が集った幸福な結婚式。
翌朝目が覚めたらベニーがそばにいて「うわ~ベニーおまえ、久しぶりだなあ! ……俺死んだのか」

要は、死後あっさり昇天して天使(合法)になったフレイザーが、レイは気づかなくとも(妻は気づく)、いつもそばにいて
レイの人生の要所要所で、より良い方向へと一触れしていた、という話なんですが、
(運命なのに幾らなんでも若すぎるという理由で退けようとしたレイを、彼女の方へ突き飛ばしたとか)
3人称なので、レイが死ぬまでフレイザーが ほぼまったく出てこない、ということでお蔵入り。
つーか、死にネタなんか1回書いたら十分じゃ!

なんだって?byすちーぶん

元政治家は棚の上に置いといて。
お蔵入りした話を何故蒸し返したのかと言いますと。

ネビル・シュートという作家をご存知でしょうか。 
    ttp://ja.wikipedia.org/wiki/ネビル・シュート

名前は知らなくても、終末映画の傑作として名高い『渚にて(1959)』の原作者、と言えば思い当たる方もいらっしゃるかも。
2000年にはTVドラマとしてリメイクされました(『エンド・オブ・ザ・ワールド』)。
彼の本は、戦前からかれこれ6冊邦訳されているそうですが、現在一般書店で手に入るのは、『パイド・パイパー 自由への越境』のみ。
(『渚にて』は、この4月28日に新訳が刊行予定)

パイド・パイパーって、ハーメルンの笛吹き?(The Pied Piper of Hamelin)
その通り。
ハーメルンの笛吹き男さながら子どもたちをひき連れて、第2次大戦中ドイツ侵攻下のフランスからイギリスへ脱出を計るヒーローは、
心臓に問題を抱えた頑固英国老人!

巡回ブログで記事を見て、普通に「おお、面白そう!」と思って図書館チェックする傍ら、
この頑固老人がレイだったら・・・v
という爺萌え妄想と、お蔵入りのベニーバイバイネタが結びつくのに時間は要りませんでした。(何故だ)(はい、棚)
いつでもどこでもできる妄想。ニン○んドー要らず。

「おい。ふざけんな。返事しろよ。何笑ってんだ、この馬鹿野郎!」
 彼は嬉しかった。
 聞きなれた怒声に男の無事が知れたから。もはや指一本動かせない彼には確認のすべがなかったから。悲鳴のようなその声に、隠しきれぬ男の愛情が迸っていたから。
 愛と、彼の命を繋ぎとめられない絶望が。
「ベニー!」

ごめんよ、レイ。

おまえ100までわしゃ101まで。
1940年代イタリア。刑事レイと騎馬警官フレイザーは、退職後も愛し合って暮らしていましたが(はい、棚)、
ある日フレイザーがレイをかばって死んでしまいます。

レイ超激怒。怒っても薄情なフレイザーは帰ってきません。
長年ともに暮らした街は、どこを見ても彼を思い出させるものばかり。
ディーフをつれたフランスへの気晴らし旅行はミントグリーンの愛車に乗って。(この時代に自車持ち!)(棚!)

南仏は気候も食事もナイスでしたが、頑固イタリア爺なんだから、気候も食事も故郷の方が合うに決まってます。
大体フランス人ってのは、なんであんなにじゅじゅじゅじゅ喋るんだ? ベニーのフランス語はもっとしゃきしゃき……、!
額に青筋。
ディーフ、帰るぞ!!! きゅぃ~~~~ん!(訳:まだ仏飯堪能してないのに~~~!)

ドイツ軍侵攻の暗雲立ち込めるフランスも、南はいまだ長閑なリゾート気分。
短い休暇を楽しんでいたお隣さん――駐仏イタリア大使夫妻――に別れを告げると、息子をイタリアに連れ帰って欲しいと頼まれます。
(大使って!原作は国連職員らしいですよ)(あ~なるほど。ま、いいや大使で。はい、棚)

13歳の少年は大人しやかに車に乗り込んだものの、ベテラン刑事の眼はごまかせません。
彼は、2年前、実父とともに、間違えて大使公邸に忍び込んだコソ泥で、負傷して逃げそこねたところを、子どものない大使夫妻が養子として引き取ったのでした。当然警官は大嫌い。
さらに、人の口に戸は立てられないというわけで、リゾート地のイタリアン・コミュニティでは、元刑事を庇って死んだ親友が、同性の愛人だったという噂も流れており、経歴の悪いフレンチ少年と、評判の悪いイタリアン刑事の相性は、最初から最悪です。
沈黙から始まった道中は我関せずのディーフを除いて、あっという間に険悪なムードに。他に当たるところが無いだけに、痛い所をダイレクトについてしまいます。

「まったく強情なガキだぜ」
「強情なおまわりなんか最低だ」
「警官には信念が必要なんだよ。強情でなくて務まるか」
「じゃあ、あんたの相棒も信念のために死んだわけだ」
「けっ! まぬけなんだよ。人助けて自分が死んでりゃ世話ないぜ」
「……まぬけ!? 愛してるから身を捨ててあんたを助けたんだろ!」
「愛~~~!? あいつは誰でも彼でも助けるんだよ! おまえの親父こそ、おまえを愛してるから置いてったんだろうが!」

少年の聡明は、たった2年でイタリア語を自国語のごとく扱うことでも明らかですが、実父に置き去られた痛みを咀嚼するには幼く、
大事にしてくれる大使夫妻を恨むこともできない、といって、甘えることもできず、特に養父との間には壁があるという、難しいお年頃。

愛する者を失った事実を素直に悲しむことができない強情なふたりは、その強情ゆえ磁石の同極のごとく反発しあいますが、
ひょんなことから旅の道連れが増え始め、(どんなことよ?)(はい、原作)(ええーーー!?)
気がついたら20人近い子どもを連れており、愛しのミントグリーンちゃんとも涙のお別れ。
(多いって!)(絵面が可愛いじゃん小学校の先生みたいでv はい棚棚♪)

思いもかけないところで食料が手に入ったり、片言仏語の外国人が大量の子どもを引き連れているのに何故か地元警察にスルーされてしまったりと、
奇妙な出来事がチラリズム的に起こっていることに少年は気づきはじめますが、子どもたちの世話でそれを追求しているヒマもあらばこそ。
一行は国境へと向かいます。

そんな中、少し離れてついてくる小さな影を少年が捕えると、それは3歳ぐらいの一目でそうと知れるユダヤ人の坊やで、
地味ながら上等な黒い上着についた染みは、明らかに血痕でした。
要領を得ない幼い話と、制服姿の大人を異様に怖れる態度から、その身に起きた悲劇を察した少年は、自分の食料を分け与え、こっそりついてくるよう言含めます。頑固爺にみつからないように。
何故なら、レイ・ベッキオはイタリアの元官憲であり、ナチス・ドイツと同盟を結んでいる彼の政府は、ユダヤ人問題においても同盟国と意見を違えないことを、少年は知っていたからです。

しかしながらベテラン刑事の(以下略)。
翌日食事を届けに行くと、坊やはもう朝食にありついていました。
緑の目のおじちゃんが道の端に食料を置いて「遅れるなよ」と言ったという坊やの言葉に心を決めて、少年は大人の男を怖がる坊やをレイの下へ連れて行きます。
あまりの幼さとユダヤ人らしい外見は、きっちり保護しないと危険だったからです。

坊やの姿を見てレイは眉をしかめました。聞き出したユダヤ人特有の男子名に、なお眉根は寄りました。
しばらくして一つ溜息をつき、レイが言います。「訳せ」

「おまえの名前はベントン・フレイザーだ」
「何言ってんだよ!」
「うるさい、言った通り訳せ!」
 レイは上着の胸ポケットから薄い手帳を取り出して、子どもの目の前で開いた。
「おまえの親父の名前もベントン・フレイザー。カナダ出身の騎馬警官で、イタリアに住んでた。おまえの青い目と黒い髪は親父譲りだ」
 死んだ男の身分証に挟まれた写真の中から、若い日の老人と騎馬警官が見返していた。先の別れをゆめにも知らない笑顔で。
「親父は、おまえのフランス女のおっかさんが死んだと聞いて、迎えに来ようとしたんだが、自分も事故で死んじまった」
 写真ごと手帳を震える子どもの手の中に押し込んで、彼は続けた。
「だから俺が代わりに来た。俺がおまえをイタリアに連れて行く。ここにいるこいつらもいっしょにな」
 幼い子どもの目から涙が一粒こぼれ落ちる。
「親がいないのはつらいな。俺もつらいよ。好きだった、……おまえの親父が」
 少年は思わず老人の顔を見たが、彼は子どもの目を見つめていた。
「ベニー。おじちゃんと来い。おまえの親父の友達だ」

……少年の名前を決めておくべきでした。まあいいや♪

差し出された手を取った坊やを抱き上げて寝付かせた後、豆のつぶれた足を手当てしたレイは、坊やの親のものであろう血のついた上着は土に埋めてしまい、あとの服は、他の子どもたちと適当に取り替えてしまいます。
一揃いの服をバラバラにしてしまうとそれだけでもう格別ユダヤ人ぽくもないじゃん、て感じで少年はほっとしたわけですが、それを見てレイは鼻でせせら笑ったことでしょう。
亀の甲より歳の功だよ、少年。敬いたまえ、どんなに大人気ない爺でも。

ここに来てのんびり調子だった逃避行も道を急がざるを得なくなります。
収容所行きの列車から親の機転と犠牲によって逃げ出してきたらしい坊やを探す、ナチの黒い影が迫ってきたのであります!
(こんな南でですか?)(棚!)

レイは坊やを抱え、少年はディーフと手分けして子どもたちをまとめ、度々休憩を入れながら抜かりなく歩みを進めます。
最後の休憩を取って、後は国境検問所まで森を抜けて一直線。
(それどこ!?)(棚!)

さあ行くぞ、というレイの掛け声で立ち上がった少年は、いきなりタックルをかまされます。
静かな森に響く銃声と、ぴったりくっついた老人の身体を貫く衝撃を、少年は確かに感じました。

バッタリと倒れて撃たれた!と少年が認識するより速く、身を起こしたレイが叫びます。

「ディーフ!」
「バウワウワウワウワウ!!!!!」
「走れーーー!!!!!」(仏語)

やるときゃやるぜ!
ディーフのナイス牧羊犬技炸裂と爺裂帛の一声に、小羊たちが一散に駆け出します。

「おまえもとっとと走れ、こののろま!」
「!」

反論している場合ではありません。
森の出口が見えたところで、またしても爺の檄が飛びます。

「叫べ!(←仏語) 助けてー!(←イタリア語)」

いきなり銃声は響くわ、森からわらわら子どもが走り出てきて、口々にイタリア語で助けを求めるわ、
イタリア側検問所は喧騒に包まれながらも、慌てて門を開けて入れてくれます。

全員が突風のように駆けこんだ後、きっちりと錠を下ろされたイタリア領内で、
数を数えて子どもたちが揃っていることを確認したレイが、ぽろりとナチに対する仏語の罵倒を口にしました。
道中前半の2人の口喧嘩は、互いの文化攻撃(伊 vs 仏)も一因だったので、少年はあっけに取られますが、気が抜けて笑い出してしまいます。
レイもつられて2人の笑い声が夕空高く響く中、説明を求める国境警備隊長さんが寄ってきますが、質問は出来ませんでした。
2人の笑い声にさらにつられて、ここかしこで、子どもたちが一斉に泣き出したからです。
ヒゲの独身中年な隊長さんおよび若い隊員さんたちはもちろん、少年も対応に追われ、話は翌日ということに。

大量の軍服にパニックを起こした坊やをなんとか落ち着かせた頃には、他の皆は既に建物の中に入っていました。
坊やを抱き上げて少年がふと振り返ると、ディーフが錠の下りた門の前で、森のほうを見つめています。
「ごはんだよ」と声をかけると大人しくついてきましたが、何故だか元気がないように思えました。

翌日、久しぶりの屋根の下の食事とベッドにすっかりリラックスして寝過ごした少年の話を一通り聞いて、女性問題で辺鄙な国境に飛ばされた隊長さんは言いました。「それで、そのベッキオさんとは、どこではぐれたのかね?」
検問所の軍人たちは誰一人、子どもたちともに駆け込んできたはずの老人レイ・ベッキオの姿を見ていなかったのです。
そんなはずはない、いっしょに検問所内に入った、誰かが見ているはずだ、と言い募っても相手にされません。

「君、策士だねえ。イタリア語で叫ばせるもんだから、うっかり入れちゃったけど、あの子どもたちはイタリア人じゃないだろう? まあ、戦災孤児ってことで処理するけどね」

少年ははっとしました。
昨夕から坊やは彼にしがみついて離れません。自らの身に起きた悲劇すら確とは理解できていないユダヤ人の幼子。ナチの追跡は振り切ったものの、イタリアも決してこの子の安住の地ではないのです。
レイの姿が見えない今、坊やの素性を知っていて正しく彼を守ってやれる者は、少年以外にいません。

「ご老体は銃声に驚いて反射的に逃げちまったんだろう、当然の反応だ。普通は驚くよ。ちゃんと捜索しておくから」

定年まで刑事を勤め上げた強情な老人が、銃声ごときに逃げ出すはずはありません。
けれど少年は反論を飲み込んで、残りの子どもたちは、
若い頃は超絶美形だったという信じられない伝説を持つ隊長さんと隊員さんたちにまかせ、
(しつこいな~!/泣 by 隊長)(I Love 辺境警備v 棚!)
坊やとディーフを連れて、養父である大使の指示通り、養母の実家へと向かいます。

大使の前持った連絡と持たせてくれた紹介状のおかげで、ごくスムーズに大使妻の実家へたどりつくと、
待っていたのは、強情なイタリアン刑事の30倍も頑固そうな田舎農夫の養祖父。
少年は迷いましたが、事実を隠し通すわけにはいきません。結局誰かを信じないわけにはいかないのです。大嫌いだったおまわりを信じて坊やを引き合わせたように。
険しい顔で話しを聞いた養祖父は、坊やに一言、名を問いました。
消え入りそうな声で坊やが、ベントン・フレイザーと答えると、彼はごつごつと節くれだった手を差し出して言いました。
「おいで、ベニー」

ようやく帰国のかなった大使夫妻がとるものもとりあえず息子のもとへやって来たときには、南仏で別れてから1年以上が過ぎていました。
まだ幾分対人恐怖の気味は残るものの、田舎ですくすく育っている坊やを、大使は少年の弟にしてくれました。小さなベニーはもう元々の自分の名前を覚えておらず、いつも半狼といっしょです。かってその名を持つ男がそうだったように。
少年は、知りたくてたまらないけれど知りたくはない、ある事柄を口にします。

「……ベッキオさんのことなんですが」
「ああ、検問所の警備隊長さんから報告書を」
「違う!」
 少年は叫んだ。
「あの爺は警官、……本物の警官だった! あんなところでガキどもを見捨てて自分だけ逃げたりなんか」
「わかってる。だからこそ君を託した」
 興奮を穏やかに遮られて少年は顔をそむけたが、その目は爛々と漲り、身体にぴたりと沿った両手の先は、きつく握りこまれたままだった。
 聡明な、素直な息子だった。けして逆らわないその態度の裏にいつも、打ち解けない彼の孤独を思った。
 手を触れると、まだ細い少年の肩がビクリと震えたが、大使は構わず引き寄せた。
「私ももう一度会いたいよ。私の息子を無事に連れ帰ってくれた、友に」
 父の胸に、堪えきれぬ嗚咽がこぼれた。

10年後、1人の青年が国境間近のフランスの村を訪ねます。
戦後の混乱もすっかり落ち着いたその村で、彼は不思議な話を聞きました。

第2次大戦中、1人の老人が子どもたちをつれて、イタリア国境に向かっていましたが、国境の直前で銃撃をうけました。
慌てて走り出した一行は、無事イタリア側に逃げ延びたようで、しばらくしてナチの追跡隊がなんの戦果もなく帰っていくのが見えました。
その後こっそり森に遊びに行った子どもが、息を切らせて戻ってきます。森でお爺さんが倒れていると。
村人が確かめに行っても、そこには誰もいません。
ただ、子どもが指差す先に赤いものが落ちていて、良く見るとそれは真っ赤な楓の葉でした。
紅葉には程遠い季節を不思議に思いながら拾い上げると、突如地面に老人の身体が現れたというのです。
人々を驚きましたが、残念ながら老人は息をしていませんでした。
ナチに対する反感もあって、村人たちは、その老人をこっそり村の墓地に葬ったのです。

うららかな陽を浴びて墓地はのんびりと明るかった。
 足を踏み入れると寛ぎを乱された兎が抗議したが、他の生き物は彼のことなど一顧だにせず春を謳歌している。
 心地よく額ににじむ汗をぬぐって辺りを見回すと、教えられた通り東の端に丈高いアーモンドの木が立っていた。
 こぼれ落ちた白い花びらをはらうと、簡素な墓石には、『緑の目の守護者ここに眠る』という文字と、楓の葉が刻まれていた。
「やっぱりあの時死んでたんだな」
 かっての少年は墓石に手を置いて、十年前、ほんの二週間ともに過ごしただけの、口の減らない老人を思った。
 彼に希みを遂げさせた、赤い楓の葉に忠誠を誓った相棒のことも。

――俺がおまえをイタリアに連れて行く。ここにいるこいつらもいっしょにな。

彼は約束を守ったのだ。
「まったく、強情な爺だぜ」
 青年は微笑んだ。

昼過ぎに青年は村を出た。
 彼の生まれた貧しい街角で、強情な警官になるために。

fin.
                                         (fin.て!)(棚!)

番外, ds unknown

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