It's a tribute to GBSX for having been #2 on the chart.
俺らが愛されてるってことだよ。
顔が見えなくても、満足そうにゆったり笑う、アランが楽に想像ついた。
吉報はやけに早くて、メールじゃなくて電話なのが律儀。
2位! だって!
声だけでそうだとわかる浮かれ具合、電話口の挨拶もほったらかしに。
朝食の片付けをしていた。
順位表メールに送っといたから、なんて楽しそうに言うから開いて確認するしかなくなって、セットアップ待ちのノート。
そして毎度のことながら、マリーは反応に困る。
つまりYou did it! と言いそうになってそれはまるで部外者みたいで、けれどそれが正しい気がしてくるから。
正しい気がするのに明らかにおかしいとわかって、結局Great! と似たような感嘆詞で返事をするしかないから。
言われた通りにメールが来ていた。リンク先に見つける順位はエミネムの下。
飛ぶ鳥も落とす勢いで売れ続けるCDは、発売から一月経っても涼しい顔して立ったまま。
なにしろ4週目だけで3万枚の売り上げで、プラチナム突破も目前で。
ドラッグしてみるその名前。
反転された、たったの六文字。
『初回一桁続行中』
「ファンが多くて嬉しいな」
それから思い立って、お気に入りから飛んでみるバンドの公式ページ。
作ったものをちゃんと受け止めてくれる人たちがいる場所。
『おっしゃる通り』
下げたトーンで、誠意に満ちてゆったりと。嬉しいよな、実感をこめた声がする。
まったくだ、なんて上がる口の端、目を細めて。
それにしても。
ホストみたいな座り方してるトップページの自分は見ないふり、アラン、マリーは息に乗せてフロントマンを呼ぶ。いつも思うんだけどさ、なんて前置き。
ニュースページの最終更新は未だに発売日のままで、ヒットチャートの順位なんて書かれてない。
けれどマリーは知っている、2位だとサイトに書かれていることを。
トップページじゃなくてツイッターじゃなくて、掲示板を見ればそれはわかる。
「サイト管理者、怠惰じゃないのか」
初め、それが不思議でならなかった。
なんのための公式サイトかと思ったくらいだ。
つまり、ファンの方が情報速くて多いなんてどういうことだ。
クリックふたつで開いたフォルダ、In the Mediaには、案の定常連が乗り出していた。
―― Great Big Sea Couldn't Beat Eminem.
ページの閲覧者は、それでもまだ多い訳じゃない。
『どういうこと? 簡単なことでしょ』
悠長ななだらかな、受け入れて見つめる声がする。
ぬるいコーヒー、目で追う文章。「巷を沸かせた発売だったが、――」
外の暑さを知っているから閉めきった部屋のなか、ファンが働く新品のマック。
窓の外はかんかん照りで、異常気象と温暖化。
世界は満ち足りるには不機嫌で、万事良好とは程遠い。
けれどこれが現在で、現状で真実で絶対だ。
『俺らが愛されてるってことだよ、マリー』
それが現実で当然で絶対みたいに、そしてそれが正しいみたいに、滲む愉快に答える声。
4週連続で1位に君臨し続ける彼には名声も売り上げも敵わないけれど、自主的に俺らを支えてくれる人がこんなにいる。そういうことだよ。
感情豊かな深い声で、それが嬉しくてしょうがないみたいに。
満たされて楽しくて、そのために続けていたいのだというみたいに。
「……おっしゃる通りだ」
だからきっとその通りなのだろう、一方的な発信はしない彼らは分け合う場所しか持たないのだと、過不足なく確かにマリーは認めた。